【スピードスケート】妹を追いかけてきた姉、高木菜那が花開く (3ページ目)

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Wataru NINOMIYA/PHOTO KISHIMOTO

 そしてその成果が、最終日の1000mこそ妹に敗れたものの、1500mと3000mでは妹よりも好成績でW杯出場を果たすという結果につながった。そして、5位の3000mと4位の1000mで代表になった美帆とともに、姉妹でのW杯挑戦が決まった。

 チームに強い男子選手がいることも刺激になっている。特に長島圭一郎には、大会の前にこうした方がいいというアドバイスをもらったり、「たくさん考えて頭を使え。自分で考えてやるしかない」と言われたのが参考になったという。初めて出場するW杯では個人2種目だけでなくパシュートにも出場するが、「自分の身長で世界と戦うためには体力も必要だし、一歩で長く氷を押すことも必要。そのためにも体のすべてを使って滑れるようにしたい」と、次への課題も口にする。

 高校時代に彼女を指導をした帯広南商業の東出俊一監督は、「負けん気が強くて貪欲な選手だ」と評価しながらこう話す。

「練習をしているとたまにきつくて吐くような時もあるけど、女子の場合は『ちょっと休ませて下さい』という選手が多い。でもあの子は口を拭いてすぐにまたやるんです。そういう気持ちの強さが出たのは、妹がバンクーバー五輪に出たシーズンでしたね。2月に帯広であった全日本ジュニアの前に『美帆が頑張っているだけでいいのか?』と言うと、そこで総合2位になって世界ジュニアの代表になり、(美帆と)ふたりでパシュートに出て銀メダルを獲得したんです。ともにメインの種目は1500mだけど、ふたりで高めあって五輪に出て、また一緒にパシュートを滑ってもらいたいですね」

 自分を追い越していった妹を追いかけて力をつけてきた姉の菜那。高木姉妹の新たな競り合いは、これから世界へと舞台を移す。

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