【月刊・白鵬】横綱も絶賛する、日本の「お・も・て・な・し」

  • 武田葉月●文 text&photo by Takeda Hazuki

第31回:おもてなし

2020年に東京五輪が開催されることが決定し、大いに喜ぶ白鵬。2020年に東京五輪が開催されることが決定し、大いに喜ぶ白鵬。秋場所(9月場所)で通算27回目の
優勝を飾った横綱。場所後は、
東京五輪招致決定の朗報とともに
美酒に酔いしれたという――。

 大相撲秋場所(9月場所)では、27回目の優勝を飾ることができました。

 場所前は、決して万全な状態ではありませんでしたが、初日の高安(小結)、2日目の勢(前頭筆頭)、そして3日目の松鳳山(前頭筆頭)と、メキメキと力をつけて手強い相手だと思っていた3人に快勝。幸先のいいスタートを切れたことで、自分なりに手応えを得て、勝ち星を積み重ねていくことができました。

 10日目、関脇・豪栄道との対戦では、相手にうまく攻められて星を落としたものの、1敗のまま、勝てば優勝という14日目の一番を迎えました。相手は、これまで何度も苦しめられてきた、稀勢の里。一度「待った」をされたあと、激しい立ち合いから稀勢の里有利の体勢を崩すと、あとはすべてが"流れ"のままでした。張り手で稀勢の里を前のめりにさせたあと、はたき込みで倒しました。

「よしっ! 勝ったぞ!」

 私は、心の中で叫んでいました。しかし次の瞬間、物言いがついたのです。稀勢の里をはたき込む際に、私が稀勢の里の髷(まげ)をつかんだのではないか、というものでした。

 もちろん、故意に相手の髷をつかんだりはしていません。審判の親方衆がビデオ室とのやりとりの中でどういう判断を下すのか、私は土俵下でじっと待っていました。

 すると、左目のあたりから血が流れてきました。呼び出しさんからタオルを受け取って出血を押さえていましたが、審判団の競技は続いていて、その時間がなんとも長く感じましたね。

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