横綱・白鵬から新社会人に送るメッセージ「日本のことをもっと知ってほしい」 (2ページ目)
それにしても、日本では就職するのがかなり大変みたいですね。大学では、勉強に没頭するよりも早くから就職活動にいそしむ学生が多くて、それでも希望の職種につくのは難しいと聞いています。にもかかわらず、念願叶って就職できても、「自分がやりたいことと違う」などといった理由で、早々に離職してしまう人も多いみたいですね。
たとえ仕事を続けていても、充実した毎日を送っている人は少ない、という話も聞きます。目標がなく、覇気が感じられない若者が多いと......。もちろん、すべての若者がそういうわけではないのですが、そういう若い人たちの話を聞くと、いつも思うことがあります。あらゆることにおいて控えめで、自分のアピールが足りないな、と。
例えば会社では、上司や先輩などから指示があるのでしょうが、言われたことだけやっていればいいというものではないと思います。仕事というのは、自分から「見つけていくもの」であり、「探っていくもの」なのではないでしょうか。そのために、もっと積極的な姿勢を見せてもいいと思うんですよね。
実力社会の相撲界は、特にそうです。親方や兄弟子から「これをやりなさい」と言われて、ただその通りにこなしているだけではダメです。そういうタイプで出世した力士は見たことがありません。
もちろん、最初は基本が大切です。上の人に言われたことを素直に聞くことは大事ですが、それ以上に自ら何かを求めていくことが重要なんです。やるべきことをやって、さらに貪欲に「兄弟子や強い力士のいい部分を全部盗んでやろう」という気持ちを持って、毎日稽古した者だけが、給料をもらえる関取に昇進できるのです。
話を戻しますが、モンゴル人の私から見ると、日本の若者は自分の国のことに対して無関心なのも気になります。私自身は、モンゴルの歴史や、日本の大相撲の歴史を知ることが、今の仕事にとても役立っています。
新社会人のみなさんも、日本という国について、大いに関心を持って、さらに好きになってもらいたい。自分が存在しているのは、先人が築いた長い歴史の上に成り立っているわけですからね。そのことをきちんと学び、自分はどんな民族なのかを知り、だからこそ今、自分は何をやらなければいけないのか? ということをもっと考えてもいいと思うんです。
そうして、先人から得たものを社会生活の中で生かして、自分の持てる力を世の中で存分に発揮してもらいたいですね。なおかつ、日本に生まれたことを誇りにして、日本の良さ、日本人の優れたところを、世界にどんどんアピールしていってほしいと思います。
プロフィール
白鵬 翔 (はくほう・しょう)
1985年3月11日生まれ。モンゴル・ウランバトール出身。本名:ムンフバト・ダヴァジャルガル。宮城野部屋所属。2001年3月場所の初土俵から順調に昇進し、2007年7月場所で横綱昇進を果たす。以来、安定した相撲で勝ち星を重ね、数々の記録も打ち立ててきた
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