【スキージャンプ】W杯総合優勝、高梨沙羅はソチ五輪でも勝てるか? (2ページ目)

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by AP/AFLO

 それに対してヘンドリクソンは、開幕戦で2位、第2戦で優勝と底力を見せたものの、第3戦に表彰台を外れると、そこからは10位前後の結果が続くという不安定なジャンプを繰り返した。

 今シーズンの高梨の試合を見ていると、同じ風の条件ならば、他の誰よりも飛距離を出せるような状態だった。その大きな要因となっているのが、助走姿勢の安定感だ。体を小さく折り曲げた低い姿勢で、しっかりとスキーに乗って滑り降りてくるため、踏み切りでもイメージした通りに台へ圧力をかけて立ち上がれ、空中へとつなげられるのだ。

 さらに今季からは、選手が滑る助走路も※クーリングシステムを採用し、アイスバーンになったことも彼女の追い風になった。バランス感覚が優れた高梨が、安定した滑りを出来るようになったからだ。

※クーリングシステム
レーンが冷えるように作られ、アイスバーン状態を保てるようになっている

 事実、そのシステムをまだ作っていない札幌の宮の森ジャンプ台での試合は、助走路の雪が緩んだり降雪があったりしてうまく滑れなかった。その上、風の条件も悪いという不運が重なり、12位と5位という成績に。そのあとのクーリングシステムがしっかりしている蔵王大会とリュブノ大会では4連勝を果たし、2戦を残してW杯総合優勝を決めたのだ。

 身長152cmで体重が45kgと特に小柄であるにも関わらず、リュブノ大会では、ヘンドリクソンを上回り、全選手中でも平均値を上回る助走スピードを出していた。体重が重い方がスピードは出るが、最も小柄な部類の彼女はその体格差を、正確な位置に乗ることでカバーしている。

 高梨にとって今季の総合優勝は、来年のソチ五輪へ向けて大きな自信になったことは間違いない。しかし、だからといって本番で、楽に勝てるかといえば、そうとは限らないというのが正直なところだ。

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