【レスリング】日本のレスリングはなぜ強いのか?

  • 宮崎俊哉●取材・文 text by Miyazaki Toshiya
  • photo by JMPA

ロンドン五輪でレスリングは、日本人女性選手初となる『五輪3連覇』をふたりも輩出した(写真は伊調馨)ロンドン五輪でレスリングは、日本人女性選手初となる『五輪3連覇』をふたりも輩出した(写真は伊調馨) ロンドン五輪で日本が獲得した金メダル7個のうち、4個を占めたレスリング。同じ格闘技でも、男子が史上初の金メダル0、女子もわずか1個に終わった柔道に対し、なぜ日本のレスリングはこんなにも強いのか? 答えは、以下の5点にまとめることができる。

【1】 伝統の『八田イズム』

 強さの秘密を問われたら、レスリング関係者は口をそろえて、真っ先にこの点を挙げるだろう。金メダル0と惨敗した1960年ローマ五輪からわずか4年、日本は東京五輪で金メダル5個を獲得。一躍、レスリング王国となったのだが、その礎(いしずえ)を築いたのが、第3代日本レスリング協会会長の八田一朗である。

「負けた理由を探すな」「左右とも利き手にしろ」「夢の中でも勝て」「マスコミを味方にしろ」「ベン(便所)学の勧め」など、八田の強化策は独自かつユニークであり、厳しかった。しかし、その内容は合理的でもあり、その教えは現代でも脈々と生きている。

【2】 福田会長の『国際性』

 八田イズムの第一継承者であり、それをさらに昇華させ、国際性を高めて現役選手たちに伝えているのが、現協会会長の福田富昭だ。国際レスリング連盟副会長も務める福田は、世界における日本の発言権を強め、国際交流を推進していった。さらに、世界選手権などの国際大会を国内で数多く開催し、毎年のように世界各国での合宿も敢行した。

 また、選手たちを積極的に海外遠征させる一方、「来る者は拒まず」という姿勢で、いつでも各国から選手を受け入れ、日本代表合宿にも参加させてきた。そのため日本選手は、ジュニア時代から外国人選手に対する苦手意識がなくなり、海外でも存分に力を発揮できている。

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