【体操】内村航平が2度目のオリンピックで学んだこと。
「やっぱり五輪には魔物がいる」 (2ページ目)
4年に1度の大会だからこそ、勝負にこだわってもいいだろう――。そう自分を納得させた。
そんな気持ちで挑んだ鉄棒は、まさに『完璧』だった。選んだDスコアは、大会に向けて予定していた構成からは0.3点下がる6.9点。その代わり、余裕を持ってすべての技をこなした内村は、着地もいつもの彼と同じように、ピタリと決めた。そして、「当然だろう」とでも言いたそうな表情を浮かべたのだ。
得点は15.600点で、5種目合計は77.590点。2位に付けていた田中に1.324点差をつけて、五輪初制覇を確実なものとした。
最終種目のゆかでは、ふたつ目の技である前宙返り2回半ひねりの着地でバランスを崩し、珍しく両手をマットに付くミスをした。最後の後方宙返り3回ひねりの着地でも少し動いてしまい、演技後、内村は申し訳なさそうな表情を見せた。しかし得点は、15.100点。5種目終えた時点で田中と僅差の3位に付けていたマルセル・グエン(ドイツ)も、最後の鉄棒で追い付けず、合計92.690点を記録した内村が初の五輪王者に輝いた。
本来の調子を取り戻し、念願の金メダルを獲得した内村は、「世界選手権は3連覇しているが、やっぱり五輪とは違って夢のようです。表彰台の上で日の丸が揚がるのを見ていても、まだ実感が沸かないというか、本当のことなのかなと考えていました」と語った。
周囲の誰もが「金メダルは内村のもの」と信じ、本人もそう思っていたロンドン五輪。28日の予選や、30日の団体で予想外に苦戦し、個人総合でやっと観客に内村らしさを見せられたものの、演技内容すべてに納得しているというわけではない。試合後、内村は「やっぱり五輪には魔物がいるんだと、再度わからされた気持ちです」と言って苦笑した。
内村にとって、2度目の大舞台――。北京五輪でも、過去3年間の世界選手権でも経験できなかったほろ苦さを、初めて味わった。だが、それもまた、さらなる進化を求める彼にとっては、有益な糧になったはずだ。
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