羽生結弦「皆さんの反応がすごく気持ちよかった」 単独公演『REALIVE』の「密度の濃さ」に観客熱狂 (2ページ目)
【続編で新しい挑戦へ】
「密度の濃いプログラムが続いた前半だけではなく、後半もすべて出ずっぱりで滑るという初めての挑戦だったけれど、それで自分の新しい価値みたいなものが生まれてくればうれしいなと思っています」
それは壮大な物語でもあった。
流れる風の音のなかで、うずくまる羽生のもとに空中から降りてきた檻(おり)。そのなかで歩き始める羽生。氷上に映し出された5カ所の正方形に象徴される世界をひとつずつ塗りつぶすように踊ると、紫、赤、黄色の光に取り囲まれる空間を通って、水の世界を走り回って、今度は氷の世界へ。そして水面に抜け出すと階段を上がって風の世界を突き進む。それから雲を突き抜けて星が瞬く宇宙空間へと旅を続けた。
最後は落下しながら踊り続けて白い世界へ。スクリーンにエンドロールが流れると、「To be continued ICE STORY 4th WHITE...」と次回のアイスショー開催の予告が映し出された。
この第2部の20分強の滑りは、『Prequel:Before the WHITE』と名づけられた羽生の書き下ろし原作をもとにつくられた『ICE STORY 4th』を予告する前日譚だった。
「『Prequel』は、『ICE STORY 4th』をやるぞということを念頭に置きながら、そこに向けての期待感を持っていただけるような、ワクワクできるようなものをひとつつくりたいと頑張りました。主人公がモノクロの世界から、徐々に外の世界の色を知っていく。出会いやその旅路のなかでだんだんと外の世界を知っていき、いろいろな感情が芽生えてくるストーリーにしたつもりです」
その曲はすべて、映画『国宝』で日本アカデミー賞最優秀音楽賞と主題歌賞をダブル受賞した原摩利彦氏によるもの。振り付けは演出家のMIKIKO氏と共作だ。
「今回は全編オリジナルにしたいという気持ちがあり、原作をつくったうえで演出チームや映像チームと話し合って候補者をピックアップさせていただき、そのなかで摩利彦さんにお願いしたいなと。当初は全曲というプランではなく、摩利彦さんも忙しい方なので、『1曲、2曲だけでも』とお願いしたら、全部書きたいと言ってくださって。
自分が滑るところだけではなく、映像のところまで全部書き下ろしてくださり、自分が書いたストーリーに音色という色をつけてくださり、そのストーリーを聴覚で感じられるようにしてくださった。僕自身も、本当に滑っていて気持ちがいいというか、原作者としてもすごく物語を感じながら滑らせていただいています」
このアイスショーで羽生は、一期一会のプログラムとともに、新たな挑戦も見せてくれた。
著者プロフィール
折山淑美 (おりやま・としみ)
スポーツジャーナリスト。1953年、長野県生まれ。1992年のバルセロナ大会から五輪取材を始め、夏季・冬季ともに多数の大会をリポートしている。フィギュアスケート取材は1994年リレハンメル五輪からスタートし、2010年代はシニアデビュー後の羽生結弦の歩みを丹念に追う。
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