検索

【フィギュア】国別対抗戦は友好的で和やかな大会 「楽しんで滑る」選手たちの表情は団体戦ならでは (3ページ目)

  • 小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

【滑る楽しさを忘れずに】

 一方、ペアではりくりゅうが世界王者の風格を高らかに示した。フリーは、ツイズル、スロージャンプ、ダンススピン、コレオシークエンスと次々に成功。最後まで楽しそうに滑りきり、安定したリフトは神々しさすら感じさせ、感動的だった。

 演技直後、三浦がよろけて転びそうになり、木原は両膝をついて立ち上がれず、すべての力を絞り出していた。

「自分たちの練習は嘘をつかないって信じて。楽しんで滑ることができました。今シーズンはケガなく練習をやってこられたことが自信にもつながって」(三浦)

「最後は体力面できつかったですが、会場にたくさんのバナーが掲げられ、(チームジャパンの)チームメイトの応援があり、どうにか滑り切ることができました」(木原)

 氷上で疲れきって動けなくなった大柄な木原を、小さな三浦が力を込めて引っ張った。三浦は、「かおちゃん(坂本花織)に、『大型犬の散歩』と言われました」とおどけていた。ふたりの愛される関係性こそ、「楽しむ」熱源になっていると言える。

「慣れてしまうと、新鮮さが失われてしまうもので......気づけば、結果を求めすぎていたと思います。僕たちは、苦労してようやく会えたパートナーなので、ふたりで滑る楽しさを忘れずに。それこそ、自分たちの楽しさなので」

 木原は言った。「楽しさ」に行きつくのは簡単ではない。ふたりはめぐりめぐって、その境地にたどり着いたことで、これだけの演技ができるのだ。

 大会結果は、アメリカが金、日本が銀、イタリアが銅だった。2026年のミラノ・コルティナダンペッツォ五輪の団体戦にもつながる戦いだったが、選手も観客も会場にいた人はどこまで点数にこだわっていたか。

 今シーズン最後の大会、"点数にならない"フィギュアスケートを堪能したはずだ。

世界国別対抗戦2025記事>>

著者プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。

フォトギャラリーを見る

3 / 3

キーワード

このページのトップに戻る