【フィギュアスケート】坂本花織がキャプテンに立候補した理由「人を楽しませたい性格」「最高の大会にする」 (2ページ目)
【楽しんでいることが伝わる演技】
その日、坂本はSPにトリで登場している。6分間練習から、表情や筋肉にこわばりがなく、心はリラックスしているように映った。"やったるで"と言わんばかりに氷を強く押し、スピード全開だった。
「ワールド(世界選手権)のような緊張もなくて」と坂本が言うように、氷の上での充実が感じられた。滑り込んできた『Resurreccion del Angel / La muerte del Angel』の音を拾うと、深紅のドレスをまとった天使になった。スペイン語で、天使の復活、天使の死を描いた曲だ。
「どんな曲でも滑れる」。それが坂本の真骨頂で、ド派手な『マトリックス』のような演技は代名詞だが、何にでも適応するスケーターである。何者にでも変われるところに、女王の強さの所以があるのだ。
冒頭、坂本は得意のダブルアクセルで長い飛距離を出している。ランディング前後もなめらかで美しかった。高難度の3回転ルッツも、みごとに着氷した。そしてスピン、ステップとすべて最高評価のレベル4だった。
3回転フリップ+3回転トーループは、GOE(出来ばえ点)を稼げなかったことで得点は伸びなかったが、成功した。熱を帯びた手拍子のなか、ダイナミックなレイバックスピンから艶やかにフィニッシュポーズを決めている。
大歓声を浴びながら、いたずらっぽく舌を出す姿がモニターに大きく映し出された。それは、最後のジャンプに対する"しまった"という思いだったのだろう。それでも、万雷の拍手を受ける彼女は楽しそうで、観客席から投げ込まれたぬいぐるみを愛おしそうに拾い上げた。75.54点の2位で、1位のアリサ・リュウ(アメリカ)にわずか0.16点差だ。
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