イリア・マリニンが「僕に一番似ている」と言う日本選手とは? 王者の夢は「フィギュアスケートを大人気に」
GPファイナル王者イリア・マリニン(アメリカ)インタビュー 後編(全2回)
フランス・グルノーブルで開催されたフィギュアスケートのGPファイナル(12月5〜8日)で連覇をなしとげた王者イリア・マリニン(アメリカ)。20歳の瞳に映る、これまで、そしてこれから目指していくフィギュアスケートとは? GPファイナル後に単独インタビューに応じた。
これまでの道のりや今後について語ったイリア・マリニン photo by Noguchi Yoshieこの記事に関連する写真を見る
【世界選手権優勝後に始めた長い旅】
ーーGPファイナルで連覇を達成しました。フリーでは7本の4回転ジャンプに挑戦し、アグレッシブな内容での優勝となりました。
イリア・マリニン(以下同) 本当にやりきった、という気持ちです。演技後は氷の上で寝たまま起き上がれなかったくらい。今の自分が試したいこと、やりたいこと、すべてに挑戦した大会でした。
ーー昨シーズンに比べて、今シーズンは本当に演技を楽しんでいるのが伝わってきます。
昨シーズンの世界選手権で優勝した時、「さあ、ここからが僕のスケートを見つける時間だ」と思いました。まずはトレーニングしてきたことをすべて発揮して、それを認めてもらえた。これからは、自分らしいスケートとは何か、自分はなぜスケートをしているのか、スケートのためにできることは何か、という長い旅を始めたんです。今シーズンは、勝敗や得点ではなくて、自分のフィギュアスケートを確立するための時間だと思って過ごしています。
ーーショートプログラムの曲は、もともと好きでウォーミングアップに使っていた曲だそうですね。
ここ数年間、アーティストのNFの音楽を聞いてきました。彼の音楽は、僕の心に深く入りこんできて、つながりを感じるのです。彼が歌にこめるストーリーは、僕の人生と似たようなものを感じて、共感することで気持ちが盛り上がってくるのです。今回のショートも、苦しみにもがき、最後に苦しみから逃れるというストーリーのなかで、自分の人生を投影しています。
ーー今シーズンのプログラムについて教えてください。フリーの『I'm not a Vampire』は個性的な選曲でした。
今シーズンは、とにかくユニークで、他の誰よりも目立つプログラムにしたいと思いました。フリーは7本の4回転を入れることも考えていましたから、人と違うことをしたいという思いをこめるプログラムです。ちょっと強すぎたり、狂っているような舞台設定がいいかなと思って、この曲にしました。
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著者プロフィール
野口美惠 (のぐち・よしえ)
元毎日新聞記者。自身のフィギュアスケート経験を生かし、
ルールや技術、選手心理に詳しい記事を執筆している。 日本オリンピック委員会広報としてバンクーバーオリンピックに帯 同。ソチ、平昌、北京オリンピックを取材した。主な著書に『 羽生結弦 王者のメソッド』『チームブライアン』シリーズ、『 伊藤みどりトリプルアクセルの先へ』など。 自身はアダルトスケーターとして樋口豊氏に師事。20 11年国際アダルト競技会ブロンズⅠ部門優勝。