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4回転7本すべてで回転不足判定に「複雑だけど乗り越える」 王者イリア・マリニンに単独インタビュー

  • 野口美恵●取材・文 text by Noguchi Yoshie

GPファイナル王者イリア・マリニン(アメリカ)インタビュー 前編(全2回)

 フランス・グルノーブルで開催されたフィギュアスケートのGPファイナル(12月5〜8日)で、アメリカのイリア・マリニン(20歳)が連覇を果たした。驚くべきは、フリーで4回転7本に挑んだこと。一方、すべての4回転が"回転不足"という判定がつき、課題も残った。史上初の栄光に挑んだマリニンに、単独インタビューを行なった。

GPファイナル後にインタビューに応じたイリア・マリニン photo by Noguchi YoshieGPファイナル後にインタビューに応じたイリア・マリニン photo by Noguchi Yoshieこの記事に関連する写真を見る

【自分の居場所を見つけ始めた】

ーーGPファイナルは、ショートプログラム、フリーともに自信にあふれた演技でした。昨シーズンに世界選手権で初タイトルを獲って今シーズンに臨んでいます。精神的に変化がありましたか?

イリア・マリニン(以下同) 世界選手権で優勝したことでの自分にとっての変化は、「自分の居場所」を見つけ始めたことです。「自分はこんなスタイルで、こんな独自性があるよ」という自分の存在を、自分自身で認められるようになったんです。試合で氷の上に立った瞬間に、「自分の居場所」に入りこんで準備が完了する。それが自信につながっていると思います。

ーースケートカナダが10月末に終わってから、ファイナルまで1カ月半ほど空きました。

 スケートアメリカ、スケートカナダと2試合続けて出たことで、ファイナルまでの準備はラクになりました。ゆっくり時間をかけて、スタミナを上げていく練習に集中できました。

ーーショートはパーフェクトの演技で、首位発進でした。手応えは?

 まずはGPファイナルということで、何か変化がほしくて新しいコスチュームにしました。ショートの曲『Running』のストーリーは、自分の中の気に入らない部分を取り除きたいのに、その方法が見つからずに苦悩する。プログラムの最後に、そこから脱する方法を見つける、というもの。コスチュームのグレーは監禁されるような苦しみと摩耗(まもう)を表し、青は自由を表しています。

ーーショートの演技についてはいかがでしょう?

 本番で氷に足を踏み入れた時、自信が湧いてきて、すごくいい気分でした。100%の集中状態でジャンプを跳び、そして最後のステップシークエンスでは観客の波に身をまかせることができました。そして自然と歌詞を口ずさんでいました。本当に大好きな曲で、試合前に聞いて、集中状態に入る時にも使っている曲なんです。

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著者プロフィール

  •  野口美惠

    野口美惠 (のぐち・よしえ)

    元毎日新聞記者。自身のフィギュアスケート経験を生かし、ルールや技術、選手心理に詳しい記事を執筆している。日本オリンピック委員会広報としてバンクーバーオリンピックに帯同。ソチ、平昌、北京オリンピックを取材した。主な著書に『羽生結弦 王者のメソッド』『チームブライアン』シリーズ、『伊藤みどりトリプルアクセルの先へ』など。自身はアダルトスケーターとして樋口豊氏に師事。2011年国際アダルト競技会ブロンズⅠ部門優勝。

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