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坂本花織「いい時ばかりではないと経験できた」GPファイナル連覇を阻んだのはアメリカの25歳

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi

GPファイナル女子シングル編

 フランス・グルノーブルで開催されたフィギュアスケートのGPファイナル。出場6人中5人を日本勢が占めた女子シングルは、大会2連覇を狙った絶対的な優勝候補の坂本花織(シスメックス)が崩れ、ひとりで日本勢を迎え撃ったアンバー・グレン(アメリカ)が制した。

GPファイナルで表彰台に上がったアンバー・グレン(中央)、千葉百音(左)、坂本花織(右) photo by Kyodo NewsGPファイナルで表彰台に上がったアンバー・グレン(中央)、千葉百音(左)、坂本花織(右) photo by Kyodo News

【女王は予想外の滑り出し】

 12月5日のショートプログラム(SP)は、2番滑走の千葉百音(木下アカデミー)がスピードに乗りきれない滑りとなり、最初の3回転ルッツ+3回転トーループの連続ジャンプは、ルッツがノット・クリア・エッジの判定。後半の3回転フリップは4分の1の回転不足でGOE(出来ばえ点)加点を稼げず、69.33点と得点を伸ばせなかった。

 そして5番滑走のグレンは最初のトリプルアクセルが少し乱れた着氷となり、「顔から転びそうになってとても緊張して、精神的にかなりパニックになりました」と振り返ったように、次の3回転フリップ+3回転トーループはトーループが「q」判定。後半の3回転ループでも着氷を乱して減点と、全ジャンプで得点を伸ばせず、70.04点にとどまった。

 最終滑走だった坂本のSPは、最初のダブルアクセルはいつものように余裕を持って決めたが、滑りにはあまり勢いがなく、体の動きにも若干の重さを感じさせた。

 次の3回転ルッツは悪い癖が出て「q」判定で減点。他の選手に差をつける得点源にしている後半の3回転フリップ+3回転トーループでも、フリップで外に振られる着氷になり、ターンしてからトーループをつけたが転倒。ともに回転不足と判定されるジャンプになってしまった。

 さらに3本のスピンとステップシークエンスもレベルを取りこぼしてしまう、らしくないミスをしてSP4位の63・98点。予想外の滑り出しだった。

「この3週間はずっと調子がよくなかった。それでも最近は少し調子も上がってきていたので、その分悔しさも大きいです。でも、今この経験ができたのはよかったと思っています」と坂本は話たした。

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著者プロフィール

  • 折山淑美

    折山淑美 (おりやま・としみ)

    スポーツジャーナリスト。1953年、長野県生まれ。1992年のバルセロナ大会から五輪取材を始め、夏季・冬季ともに多数の大会をリポートしている。フィギュアスケート取材は1994年リレハンメル五輪からスタートし、2010年代はシニアデビュー後の羽生結弦の歩みを丹念に追う。

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