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宇野昌磨「感傷に浸りながら...」思い出の曲をアイスショーで再演 「自己満足」掲げた今季に見せた真骨頂 (2ページ目)

  • 小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 坂本 清●撮影 photo by Sakamoto Kiyoshi

【楽しくない先に楽しいことがある】

「自分自身に興味があるので、(これから)どうなるのかっていうのが(モチベーションに)あります」

 今シーズン開幕前、宇野はそう語っていた。他者との競争からは脱していたのだろう。世界を連覇した絶対王者として、自分の道を行くしかない。

 あるいは、王者という称号すら彼自身が求めるものではなく、フィギュアスケートというスポーツに対する愛情のようなものこそ、彼の燃料なのかもしれない。

「自己満足」

 彼はシーズンのテーマをそう設定していたのが、その証拠だ。

 2023−2024シーズンを総括すると、宇野は自分と対峙し、結果を残したと言えよう。

 グランプリ(GP)シリーズは、中国杯とNHK杯はどちらも2位、GPファイナルも2位だった。しかし、全日本選手権では6度目の優勝を飾っている。最終グループに近づくたび、5、6人が次々に点数を塗り替える熾烈な争いで、彼が決着をつけた。

「たくさんの全日本を経験してきましたけど、これだけ皆さんのすばらしい演技が続くことはなかったんじゃないか、と思いました」

 宇野はそう振り返って、こう心境を明かしていた。

「自分も、一日も無駄にしないような練習はしてきたつもりです。いい時、悪い時とあって、試行錯誤のなかで今日に至るというか......。正直、僕は表現を頑張りたいです。ジャンプの練習は嫌いではないですが、調子が悪くなってしまうとストレスでしかない。

 やはり表現とジャンプの両方を頑張りたいんですが、競技をやる以上はジャンプ(のほう)を頑張らないといけなくて。それが楽しいかと言われたら、楽しくない先にも楽しいことがあるといった感じです」

 じつに正直な青年だ。

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