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高橋大輔が語るかなだいの新プログラムに込めた想い「新しい展開も見守ってもらえるように」 (3ページ目)

  • 小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 坂本 清●撮影 photo by Sakamoto Kiyoshi

【それぞれの新境地】

 村元はもともと表現力やダンスに定評はあって、シングル、ダンスという多様な経歴の示すとおりだろう。そしてプロ転向で、より表現の幅が広がった。今回の『フレンズ・オン・アイス』では、3回目となる荒川静香のソロ『歌よ』の振り付けも担当し、新境地を切り拓きつつある。

「アメリカでシェイ=リーンに振り付けをしてもらっている間、振り付けって自由でいいんだな、やりたい動きをやってみようって思えました。その影響が荒川さんの振り付けにも活きていますね。大ちゃんにも一緒にやってみてもらって。

 荒川さんはひとつのポーズ、ラインが美しいので、プラスコンテンポラリーの細かい動きを入れて。『歌よ』の歌詞は心に響くだけに、それを動きで見せたいなと」

 一方の高橋は、表現者として極まりつつある。彼もシングル、ダンスの両方で培った経験は伊達ではない。他のスケーターとの共演のなか、お互いの力を引き出し合っていた。

「大変でしたけど、本当にカッコいいグループナンバーで。スタートから最後まで思いきり全力で、お客さんに届けられるようにしたいです」

 高橋はそう意気込みを語っていたが、前半の山場であるグループナンバーは白眉だった。数々のスケーターたちが滑ってきた名曲『Poeta』を、しびれるような作品に洗練させていた。

 とりわけ、ステファン・ランビエルとスパニッシュギターの旋律に乗った「ステップ対決」は極上で、特別感があった。まさに「高橋劇場」の真骨頂と言える。

 今回の『Poeta』は4人のグループナンバーになっているが、アイスダンサー現役時代にこの曲を滑った村元もソロで共演。ランビエルも代表作のひとつで、アンドリュー・ポジェを加えた4人でつくる世界は必見。

「『Poeta』は鳥肌ものでした。この場にいられることが幸せだなって」と共演の島田高志郎も絶賛するほどだ。

 村元、高橋は今までと変わらず一緒に歩みながら、それぞれが表現者としての幅を広げ、深みをつくっている。その感覚は再び共演することで、スパークするのだろう。お互いが触媒になって、濃厚な作品を届けられる。

「新しい展開も見守ってもらえるように。まだまだジェットコースターに(一緒に)乗ってくれたらいいな」

 引退会見で高橋は語っていたが、新章のスタートだ。

著者プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。

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