羽生結弦は「精神がグジャグジャ」「泣きそう」な状況を越え全日本連覇。北京五輪は「勝ちにいく」 (2ページ目)

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 11月のNHK杯の前に、現在より完成度は低いものの、着氷できるようになったという。だが、その数日後にねんざをし、ストレスで食道炎になって熱が出た。1カ月くらいは練習できない時期が続いた。そうした時期には「やめてもいいのではないか」とも思った。それでも、今のような4回転アクセルができるようになった2週間ほど前からは、自分のなかで練習の仕方が確立されてきていた。「このためにはこの練習をすべきだ」というものを思いつき、「やっと身についてきたのではないか」という手応えも得るようになった。

「ただ、(練習の仕方が)わかってきたと言ってもそれをパッとやってパッとできるわけではないし、トリプルアクセルともまた違っているので、もっと積み重ねていかなければいけないなと思います」

 羽生はそう話し笑顔を見せた。

【"らしい演技"で全日本連覇】

 この日の羽生は、フリー直前の6分間練習の前から「泣きそうになっていた」とも話した。会場を見まわし、「あと何回こういう景色を見られるのだろう」と。そして、「今まで頑張ってきたなかでの、いろんなことを思い出した」と。

 そんな気持ちで臨んだ4回転アクセルを組み込んだフリー演技は、4回転ループを入れた構成とは比べ物にならない体力の消耗があったという。だが、冒頭の4回転アクセルはダウングレードでトリプルアクセルと同じ基礎点のうえで3.89点減点されたが、以降、完璧な演技をした。

 きれいにコントロールした4回転サルコウは4.30点の加点をもらい、そのあとのトリプルアクセル+2回転トーループも3.31点の加点。後半に入ってもショートプログラム(SP)で悔しさが残った4回転トーループ+3回転トーループは3.12点の加点で、4回転トーループ+1オイラー+3回転サルコウはジャッジも5点と4点を並べる、4.48点の加点。スピンとステップもすべてレベル4でフリーの得点は、完璧な演技をした昨年の全日本選手権に4.78点足りないだけの211.05点。合計も公認の自己最高に0.23点及ばないものの322.36点の高得点で大会連覇。羽生結弦らしさとすごさを、存分に見せた。

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