2021.02.15

羽生結弦が選んだ特別なプログラム。平昌五輪は「この曲で勝ちたい」

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

『羽生結弦は未来を創る〜絶対王者との対話』
第Ⅴ部 プログラムの完成(5)

数々の快挙を達成し、男子フィギュアスケートを牽引する羽生結弦。常に挑戦を続ける強靭な精神力と自らの理想を果敢に追い求める情熱を持つアスリートの進化の歩みを振り返る。世界の好敵手との歴史に残る戦いや王者が切り拓いていく未来を、長年密着取材を続けるベテランジャーナリストが探っていく。

2017年5月、アイスショーで『バラード第1番』を力強く滑った羽生結弦2017年5月、アイスショーで『バラード第1番』を力強く滑った羽生結弦
「新たなステージに引き上げてくれた」というショートプログラム(SP)使用曲『バラード第1番』とフリーの『SEIMEI』。羽生結弦は、幼い頃から目標にした勝負の場である2018年平昌五輪に、その自信のあるプログラムで挑むことを決めた。

 五輪連覇がかかる羽生が常々口にしていたのは、「難度の高いジャンプを跳ぶだけではなく、スピンやステップなどの表現も含めて完成された、芸術性も併せ持ったプログラムを目指したい」ということ。平昌五輪は、その理想形を実現する最大の場と考えていた。

 このプログラム選択に、2017ー18年シーズンにかける覚悟の強さを感じた。羽生にそう伝えると、「そうですね。やっぱりそう感じますか?」と微笑みながら、言葉を続けた。

「本当に自分のやりたいようにやるというのが、一番じゃないですかね。何よりも『バラード第1番』に関しても『SEIMEI』関しても、自分が音を感じられるプログラムです。『ホープ&レガシー』もそうでしたが、今回、音だけではなく世界観も感じ取るようなプログラムにしたい。その点で一番演じやすいというのが最大のポイントです。

『SEIMEI』は2015ー16シーズンにいい演技ができたときから、五輪シーズンに使いたいと決めていました。だからこそ、昨シーズン(2016--17シーズン)は曲を何にしようか迷いました。"和"でいきたいと思っていたけれど、2015--16シーズン(の『SEIMEI』)とかぶってしまうかな、と。でも、今シーズンは迷いなく決めました。

 ある意味、2シーズン前の演技にとらわれる部分もあるかもしれない。それでも同じ曲で同じような振り付けもある流れの中で、まったく難易度が違うものをやっているので。同じプログラムだけど違うことを、一歩先のことをやっているので、とらわれるということを考えなくてもいいのかなと考えています」