4回転時代と向き合う宮原知子。完璧性を求めプログラムを物語にする (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 3回転サルコウも降り、鐘が鳴って疾走感が出ると、レベル4がついたスピンは物語の悲劇を匂わせた。3回転フリップ+2回転トーループ+2回転ループは最後が回転不足を取られたが、3回転ルッツは着氷。スピンは鋭く優雅な回転で、指先は生き物のように狂おしくうごめいた。最後はダブルアクセル+3回転トーループで2本目に半回転未満の回転不足はついたが、そこから高まる曲調に引っ張られるように、やはりレベル4がついたスピンまで完璧に滑り切った。

 演技が終わると、宮原は左腕を一閃するように振り下ろした。控えめな彼女なりの感情の爆発だった。直後のインタビューでは、自分では制御できないほど涙があふれてきた。

「(昨年は)本番に委縮する自分がいたので。そこを伸び伸び滑れるようにと思ってきました。緊張をコントロールするというか。そこは大きくはないけど、小さな手ごたえはありました」

 リモート会見に出てきた宮原は言った。すでに口調は落ち着いていた。

「ジャンプに関しては、その日の一本一本の質を高める練習はしてきました。まだ練習ほど本番ではいい演技ではなくて。課題はたくさんあるんですけど、少しずつ自分なりに上がっている感覚はあります。引き続き、これまでのように自己管理して、メンタルやトレーニング方法を考えながら、一日一日、練習していければいいと思います」

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