2020.11.16

羽生結弦が迷いの先に見出した道。ジャンプに込める思いを語る

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

『羽生結弦は未来を創る〜絶対王者との対話』 
第Ⅲ部 異次元の技術への挑戦(6) 

数々の快挙を達成し、男子フィギュアスケートを牽引する羽生結弦。常に挑戦を続ける桁外れの精神力と自らの理想を果敢に追い求める情熱を持つアスリートの進化の歩みを振り返る。世界の好敵手との歴史に残る戦いや王者が切り拓いていく未来を、長年密着取材を続けるベテランジャーナリストが探っていく。

2019年のスケートカナダSP演技の羽生結弦 
2019ー20シーズン、当初、大技・4回転アクセルへの意欲を口にしていた羽生結弦だが、スケートカナダ直前には構成に「迷いがあった」との心境を吐露していた。

 初戦のオータムクラシックのフリーで演技構成点が思うように伸びず、それまでこだわってきた難しいつなぎをしながら、ジャンプを跳ぶことに疑問を覚えたからだ。つなぎの複雑な動きを外そうかとも考えたという。ジャンプの確率を上げるためにはスピードを少し落とし、しっかり体勢を整えて跳ぶほうが明らかに成功する確率が上がるからだ。

 だが、スケートアメリカで3連覇を果たしたネイサン・チェン(アメリカ)の演技を見て、こう感じたという。

「自分はやっぱり彼(チェン)のようなタイプではない。もちろん、彼にはない武器は持っている。だからこそ、難度の高いジャンプに挑戦しなければと焦るより、自分の演技をしなければいけない」

 さらにこう続けた。

「これまでは現実のネイサン選手ではなく、自分が幻想化した彼と戦っていたのではないかとも思った」