羽生結弦の心に火をつけた「衝撃」。チャンとの戦いで手にした収穫とは (5ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 能登直●写真 photo by Noto Sunao(a presto)

 それでも、チャンとの戦いの中で、彼の存在感や同じ大会で滑るプレッシャーに左右されずに「(SPで)自分の演技ができたことが大きな収穫」と羽生は言った。

「(チャンのように)SP、フリーともノーミスというのは、スケーターにとって稀(まれ)なこと。その舞台に一緒にいられたというのは光栄です。今は雲の上の存在ですけど、その演技を見たことで、『もっと頑張らなきゃ』と思えました」

 また羽生は、チャンが言った「曲や音を表現するために、膝の使い方を意識している」という言葉について、「衝撃的だった」と話した。

「スケーティングでは手や上半身を使いますが、彼(チャン)の場合は下半身でもしっかりと曲やリズムを表現し切れています。ものすごく高度な技術ですが、『そういうこともできるんだ』と驚きました。それができるからこそ、点数も伸びるんだと思いました」

 さらにカナダ大会では、チャンが19歳で挑んだ10年バンクーバー五輪の時の話も聞いたという。 「ものすごく勉強になりました。英語が少しずつわかるようになっているので、海外選手の言葉にも耳を傾けられるようになりました」

 このシーズン出場したGPシリーズので、チャンと同じ時間を過ごした羽生は、勝利すること以上の貴重な収穫を手にしたと言えるだろう。

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