「活動休止」「撤回」...17歳の
ザギトワに何が起きているのか

  • 辛仁夏●文 text by Synn Yinha
  • 能登直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

グランプリファイナルでは6位に終わったアリーナ・ザギトワグランプリファイナルでは6位に終わったアリーナ・ザギトワ 12月14日午前、衝撃的なニュースがロシアから入ってきた。平昌五輪女王のアリーナ・ザギトワが13日、現地のテレビ番組で「これからの競技会には出ない」と発言し、12月下旬のロシア選手権などの大会に出場しないというのだ。競技活動の一時休止だが、現役引退の可能性さえ囁かれた。その後、本人がインスタグラムで一転して活動休止を否定した。テレビ番組での発言は「不安で、自分の考えをはっきりと伝えることができなかった」と言う。いずれにせよ、その胸中が揺れているのは確かだろう。

 まだ17歳ながら、すでに五輪を含めた主要なタイトルは獲得している早熟のスケーター、ザギトワ。2017-18シーズンにシニアデビューを果たすと、グランプリ(GP)シリーズ2連勝、GPファイナル優勝、ロシア選手権と欧州選手権も初制覇し、その勢いのまま平昌五輪で金メダリストとなり、一気にスターダムを駆け上がった。

 翌シーズンは真面目でストイックな性格が功を奏して、徹底した体重管理をしながらとことん練習で滑り込み、体型の維持にも努めた。GPファイナルこそ初出場の紀平梨花に敗れたものの、世界選手権では五輪女王の意地を見せて初優勝を成し遂げた。

 前述のロシアのテレビ番組では、落ち着いた表情で次のように語っている。

「私はすべてを手に入れた。でも人生は満たされているばかりではいけない。スタート地点に立とうという気持ちを取り戻したい」

 すでに2年近く前から、ザギトワがさまざまな葛藤を抱えていたことを、指導するエテリ・トゥトベリーゼコーチは明らかにしている。燃え尽き症候群、モチベーションの低下、身長が伸びるなど成長によるジャンプのズレ......精神的にも技術的にも、手に負えないさまざまな変調が押し寄せてきたことは想像に難くない。

 そんな状況の中で、ロシアでは4回転ジャンプやトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を跳ぶ若手スケーターたちが台頭してきていた。それも、同じクラブで一緒に練習している、1、2歳しか違わない後輩たちだ。そんな新鋭たちがシニアデビューした今季、一気に新時代が幕を開けることは、ザギトワ本人も十分わかっていたに違いない。

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