秘策を繰り出した坂本花織が全日本女王に。「ノックアウトしました!」 (2ページ目)

  • 辛仁夏●文 text by Synn Yinha  能登直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 優勝争いを演じたなかで、SPとフリー、ともに持ち味のダイナミックなジャンプを跳んで堅実な演技を見せたことが勝因だった。

 今季のグランプリ(GP)シリーズではスケートアメリカで2位、フィンランド大会3位と連続表彰台に上り、初出場のGPファイナルでは銅メダルまであと一歩の総合4位と健闘した。昨年の全日本選手権は、SP首位発進からフリーで4位に沈んだが、総合2位に入って平昌五輪代表の座を奪い取った。今年のフリーでは最終滑走者の重圧をはねのけて納得の演技を見せ、試合後は大きなガッツポーズが飛び出した。

「ジャンプではちょっとずつ堪えて降りたりして、完璧じゃなかったんですけど、(非公認ながら)自己ベストを更新できたので、ファイナル以上に自信がつきました。(演技後のガッツポーズは)やり切ったから出ました! ここであきらめてしまったら、いままで1年間頑張ったことが無駄になると思うので、必死に頑張りました。全日本チャンピオンになってうれしいけど、まだあまり実感ないかな」

 フリー『ピアノ・レッスン』は昨季の五輪シーズンで初めてダックを組んだ振付師のブノワ・リショー氏が手がけている。坂本の特徴を十二分に生かしたプログラムになっていることも、今季好調な要因になっていると言っていい。

 また、全日本女王の称号を手に入れることができたのは、この1年で表現力がついたことも大きいだろう。昨季は表現面でだいぶ苦労していたが、今季は試合を重ねるごとにレベルアップしてきた。

 坂本が課題にしていた表現面の成長を促そうと喝を入れてきた中野園子コーチも、今大会での演技を高く評価した。

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