フィギュア超絶マニアが、羽生結弦の金メダル演技を異常に細かく分析 (4ページ目)

  • 高山 真●文 text by Takayama Makoto  photo by JMPA/Noto Sunao

●足替えのシットスピンのあと、バックエッジの滑らかさや大きさを右足・左足それぞれの片足で見せる。で、右足のバックエッジがフォアエッジに変わる瞬間に、ピアノのもっとも高い音を合わせている。

「エッジが、曲を奏でる」ということに、細部まで向き合ったプログラムであることに感激します。

●トリプルアクセルの前後のトランジション。ルール上は、トリプルアクセルの前にも後にも、ステップを入れる必要はありません。が、羽生はリンクの対角線をほぼいっぱいに使ってステップを踏んだ後、トリプルアクセルを跳びます。

 見事なバックアウトエッジでジャンプを着氷した後、スピード豊かな流れのままに、バックインサイドへとチェンジエッジ。そしてすぐ、なめらかにフォアエッジに移行、2回転分のターンを入れています。ここまでが、着氷した足でおこなうトランジションになっています。

 着氷後から、2回転分のターンが終わるまでの距離の長さと、充分に保たれているスピードも、羽生結弦のオリジナリティのひとつに挙げたいと思います。

 また、バックアウトからバックインへとチェンジエッジするときは、ややタメが入るようなピアノの音、そのピアノが華やかにこぼれるような音に変わったところでターンに入るという、音楽との同調性も素晴らしい。

「このエッジワークには、こういう『音』が似合う」という、明確な主張を、トリプルアクセルのトランジションにも入れてきているのを感じます。これも羽生結弦のオリジナリティだなと強く感じます。

●ターンの連続からの、4回転+3回転のコンビネーションジャンプ。2番目のジャンプのトリプルトゥは、両手を上げたポジション。もちろんジャンプそのものの難度も上がりますが、それ以上に、着氷した瞬間のアームの表現が素晴らしい。

 着氷のバランスをとるために両腕を広げているのではなく、「叩きつけるようなピアノの音との同調性」の表現として、アームを使っているのがはっきりわかる。非常に熟練性が高いと思います。

●ステップシークエンスは、要素の実施順に「ツボ」を書いていきます。

 ■序盤の、羽生のナチュラルな回転方向とは逆の、時計回りのターン。

 これは2015-16年シーズンの演技とも共通するムーヴですが、2シーズン前と比べて、このターンが非常にシャープになっている。そして、「きっちり1回転ターンしている」ということが、よりはっきり見えるようになっています。

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