金メダルより大切なもの。メドベデワがこだわった「演技への思い入れ」 (2ページ目)

  • 辛仁夏●文 text by Synn Yinha photo by JMPA/Noto Sunso

 ケガからの復帰戦となった欧州選手権でも、それまでの圧倒的な強さを見せきれずに準優勝に終わった。五輪の前哨戦でザギトワとの初対決に敗れたことも、平昌五輪のメダルの色が銀へと変わった一因になったに違いない。

 平昌五輪ではショートプログラムで首位ザギトワにわずか1.31点差の2位につけた。非の打ちどころのない演技を見せたメドベデワは、より難しいジャンプ構成を組んできたザギトワに技術点で2点近く引き離されたものの、演技構成点では1点近く上回った。その差はわずかで、フリーで逆転する可能性も十分にあった。

 そして迎えたフリー。最終滑走者はメドベデワが務めることとなり、舞台は整った。あとは、最高の演技で最高の結果を出すだけだった。

 フリーのプログラムは『アンナ・カレーニナ』で、主人公になりきって物語を紡ぎ出すメドベデワの情感こもった演技が輝きを増していた。

 フィギュアスケートのプログラムは「一枚の絵」に例えられる。洗練された芸術であり、むやみやたらに「書き直せない」レベルの高い構成が施されている。演技構成点が高いほうが戦いに有利なフリーでは、メドベデワが逆転するのではないかと予想する声もあがっていた。

 一方、ジャンプ構成をいかようにも変更できる高い身体能力と技術力を持つ彼女が、ジャンプ構成を少し変更してくるかもしれないという予想も少なからずあった。だが、こちらの予想は見事に外れた。メドベデワは、自らの演技や「一枚の絵」のようなプログラムを、勝負のためにいじることはしなかった。あくまでもこだわりのある演技を貫いたわけだ。

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