羽生結弦の初戦、心もスケーティングも「静かに演じた」世界最高得点

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyamas Toshimi 能登直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

 9月22日にカナダ・モントリオールで開催されたオータムクラシック男子ショートプログラム(SP)で羽生結弦は首位発進。10日前に右膝に痛みが出たために大事をとり、右足で踏み切る4回転ループを回避したものの、4回転サルコウと4回転トーループ+3回転トーループ、トリプルアクセルというジャンプ構成で臨んだ。

今シーズン初戦のSPでいきなり歴代最高得点を更新した羽生結弦今シーズン初戦のSPでいきなり歴代最高得点を更新した羽生結弦 この日の羽生は終始冷静だった。第2組2番滑走だった夜の演技の6分間練習では、最初に跳んだトリプルアクセルの着氷で手をついたが、少し時間を空けてから跳んだ次の4回転トーループからの連続ジャンプは、セカンドの3回転トーループをきれいに決めた。そして、4回転サルコウも余裕を持ってきれいに決めるとジャンプの練習はやめ、スケーティングを確かめていた。

 演技を終えた前の滑走者のジョルダン・ドドス(オーストラリア)と入れ代わるようにリンクに上がると、最初に6分間練習で失敗したトリプルアクセルをきれいに決め、その後はトーループへの入りの軌道と、サルコウへの入りの軌道を確かめ、静かな表情で名前がコールされるのを待っていた。

 出だしは、静謐そのものだった。彼が初めてこの『バラード第1番ト短調』をSPのプログラムとして選んだシーズン、「ピアノの音をしっかり表現したいからこそ、静かな調べで始まる曲の雰囲気を壊さないために、滑り出しは氷をガリガリかかないで、音もなく滑り出すような演技をしなければいけないと思っている」と話していたのを思い出す冒頭の滑りだった。

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