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鈴木明子さんが解説。
浅田真央とライバルたちの全日本フィギュア (2ページ目)

  • 元永知宏●取材・文 text by Motonaga Tomohiro 能登直●撮影 photo by Noto Sunao

――12月24日から札幌で全日本選手権が行なわれます。ここで再び浅田選手らしい演技が見られるでしょうか。

鈴木 とにかく、自分が納得できる演技をしてほしいと思います。浅田選手は休養したことで、自分を客観視できるようになったのではないでしょうか。一度氷から離れたことで、新しい気持ちで競技と向き合えたのではないかと思います。

 浅田選手がフリーの演技に選んだのは、『蝶々夫人』です。復帰戦では、最初のポーズを決めた瞬間から、演技に入り込んでいました。何かが降りてきたような、役になりきった彼女を見たのは本当に久しぶりでした。

 彼女の場合、トリプルアクセルやジャンプが注目されますが、休養しているうちに表現の部分が伸びたように思います。フリーの演技を見て、このプログラムを本人が本当に気に入っているのがよくわかります。

 ずっと特別な環境で練習してきたので「普通」を経験することができなかったけど、スケートから離れて普通の生活をしたことで、大人になったような気がします。前よりも強くなったかもしれません。

フィギュアはコツコツ努力した人が最後に勝つスポーツ

――浅田選手が6位に終わったGPファイナルで表彰台に上がったのが、17歳の宮原選手。昨シーズンの世界選手権銀メダルに続き、GPファイナルは2位。日本のエースと言える存在になりました。

鈴木 昨シーズン開幕前は、「日本の女子は大丈夫か?」とよく聞かれました。でも、世界選手権で宮原知子選手が銀メダルを獲得し、本郷理華選手が6位、村上佳菜子選手が7位入賞を果たしました。みなさんの心配が杞憂だったということは、宮原選手たちが証明してくれました。

 彼女の場合、突然大化けしたという感じではありません。これまで地面を耕し、種を植え、毎日毎日水をやっていた花が、ある日パッと開いたという印象です。コツコツコツコツ努力してきたことが、実を結んだのだと思います。

――宮原選手が「練習の虫」であることはよく知られています。

鈴木 宮原選手は、練習中に一切無駄口を叩くことはありませんし、普段の生活でも物静か。これほど静かな選手はフィギュアスケートでは見たことがありません。熱い闘志を胸に秘めるタイプです。

 自己主張の激しい選手たちのなかで、147センチと小さな身体が独特の存在感を放つようになりました。どのスポーツでも努力は必要だと思いますが、努力を続けることは困難が伴います。でも、やり続ける人はやっぱり強い。宮原選手は、日本人が本来持っている美徳をその小さな背中で表現してくれているのかもしれません。世界のトップを目指すためには才能も必要ですが、努力に勝るものはないと私は思います。

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