連覇達成。羽生結弦が語ったGPファイナルの「収穫」 (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi 能登 直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

フリーでは2種類の4回転ジャンプを成功させ、演技後に笑顔を見せる羽生フリーでは2種類の4回転ジャンプを成功させ、演技後に笑顔を見せる羽生
 また、羽生はグランプリファイナルに向けて日本で調整を続け、ブライアン・オーサーコーチが渡してくれたハードな練習メニューをひとりでこなしてきた。そのため、自分で判断してやってみなければいけない状況が増えた。

「ブライアンがやってくれるのはプランの提供だったり、精神面のコントロールですけど、それはあくまで客観的なもので、すべてを充足させられるわけではない。家族との関係でも、自分でなければわからないことがあるように、そういう感覚的なところは自分で考えて、自分で見つけ出していかなくてはいけないと思うんです。

 今回いちばん良かったのは、演技前の練習でトリプルアクセルを初めてやったことです。今シーズン試合を経験してきたなかで、序盤は何となく動ききれていない感覚があって......。3回転ループの確率が上がって、ミスはしない自信を持てるようになってからはループを試合直前に跳んでいましたけど、(練習で)4回転ループも跳んでいる今では気を抜いても3回転(ループ)を跳べるようになっているから、それだけでは体が動かないという感覚があったんです」

 実はそれは、大会前にひとりで練習していた時から感じていたことだった。試合をシミュレーションして少しきつめの練習をした後、リンクから上がって10分間スケート靴を脱ぐ。その後に曲をかけた練習をしたが、フリー冒頭の4回転サルコウは一度も決まらなかった。そこで「ウォーミングアップの方法が悪いのだろうから、何かを変えなければいけない」と考えていたという。

「練習でループがパンク(失敗)した瞬間に『これはトリプルアクセルをやった方がいいな』と思って急遽やってみました。今の身体の状態だったらトリプルアクセルは確実に跳べるという自信があったので、ブライアン(・オーサーコーチ)に相談しないでやってみたんです。身体を締める感覚や回転速度が4回転に近いということもありますし。

それで今回も、リンクに上がる前に『(フリーの)試合の前にトリプルアクセルをやってみたい』とブライアンに言って、『いいんじゃないか』という許可をもらっていたんです。フリーの6番滑走といういちばん過酷な状況で4回転サルコウがきれいに決まったのは自信になりましたし、(同時に)演技直前にトリプルアクセルを試すことができた収穫は大きいと思います」

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