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アメリカ大会で逆転負けも、羽生結弦の未来に不安を感じない理由

  • 青嶋ひろの●取材・文 text by Aoshima Hirono
  • 能登直●撮影 photo by Noto Sunao(a presto)

スケートアメリカでショートは1位も、フリーでふるわず総合2位だった羽生結弦スケートアメリカでショートは1位も、フリーでふるわず総合2位だった羽生結弦「ここで負けちゃったので、次は絶対勝たないといけない。せっかく地元での試合(11月に仙台で開催されるNHK杯)ですし、相手が髙橋(大輔)さんだろうと、チームメイトだろうと、絶対次は勝ちたいです!」

 GPシリーズの初戦、スケートアメリカのフリー終了後の共同取材。3分46秒という短い間に、「絶対勝ちたい」の言葉を、仙台生まれの17歳、羽生結弦は4度も繰り返した。

 悔しい気持ちは、よくわかる。今大会の会場入り後、3度滑った公式練習では、そのすべてで驚くほど絶好調。4回転トーループも4回転サルコウも、これでもかと決めて見せた。前日のショートプログラムでは歴代最高得点の95.07点で、2位の小塚崇彦を10点近く引き離して1位。フリー前、誰もが彼の優勝を疑っていなかったし、ミスをしたとしても4回転一度くらいではないか、と考えていた。そのくらい彼が負ける要素はなく、勝てる試合だったのだ。

 それが蓋を開けてみれば、4回転トーループ転倒、4回転サルコウ転倒、2回転ルッツ両足着氷、コリオグラフィーシークエンス(ステップ、ターン、スパイラルなどの連続)は認められずノーカウント......とミスが続いてしまう。フリー3位、総合2位にとどまったのが不思議なほどの出来だった。
 
「まだこんなもんなんですよ、今の自分は。あれほど安定していた最初のトーループでこけちゃったことで、かなり集中力が乱れて、最後まで......。情けないです、本当に」

 しかし、これだけの大失敗を前にして、現地の日本チーム関係者や報道陣に悲壮感はなかった。それは羽生結弦が公式練習で、ショートプログラムで、ジャンプ、スケーティング、プログラム表現のすべてにおいてレベルアップした姿を見せていたからだ。また、彼がほんとうは本番に弱いわけではなく、これまでもさまざまな失敗をすべて短期間で昇華し、シーズン終わりには必ず課題をクリアしている、その強さを誰もが知っているからだ。

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