【独占取材】中谷潤人は勝負のラウンドで「視界が二重になった」 120パーセントを出した井上尚弥戦を経て「KOアーティストを目指す」 (2ページ目)
【芸術的な一戦を経て、さらなる高みへ】
「11、12ラウンドでギアを上げて攻撃する策でした。もちろん、KOを狙っていましたよ。でも、井上選手の技術で負傷しました。あちらが一枚上手だったという感覚があります」
中谷は快活に喋った。
「自分を出しきりましたね。スコアが読み上げられた時、『井上選手かな』という思いでした」
116-112、116-112、115-113のスコアで、チャンピオンが4冠統一スーパーバンタム級タイトルを防衛した。
「もちろん、悔しいです。でも、これまでやってきたことを出せたと感じています。清々しさがありました。結果を受け入れながら控え室に戻り、10年以上同じチームの一員として切磋琢磨してきた仲間(WBOフライ級王者のアンソニー・オラスクアガ、バンタム級選手のエイドリアン・アルバラード)と顔を合わせた際、『心が震えた。いい試合だったよ』と言われ、ちょっとウルっときましたね。
その後、いろんな人から『感動した』という言葉をかけていただきました。多くの人の心を動かせたのであれば、とても光栄です。プロボクサーとしてあるべき姿というか、ボクシングという競技を通じて、見る人を奮い立たせることができたのなら、よかったなという風に考えています」
師であるルディ(左)、弟でマネージャーの龍人氏(中央)をはじめ、さまざまなサポートを受けてモンスターに挑んだ photo by Soichi Hayashi Sr.この記事に関連する写真を見る
中谷は言い切る。
「2026年5月2日の時点で120パーセントの中谷潤人を築き、自分のすべてを出せたので悔いはありません。ずっと突っ走ってきて、トップコンテンダーとして最強の男と対峙できた。僕ひとりだけでなく、相手あってのボクシングです。井上選手と闘えたからこそ、ボクシングの美しさだったり、芸術的な部分を感じてもらえたんじゃないかなと思います」
中谷という男は、絵画、彫刻、神社仏閣などの芸術を好む。繊細な筆の動き、刃の使い方、色彩の調和、あるいは1本の釘の打ち方に努力の跡、制作者の歩みを感じるのだ。
「もっともっと突き詰めて、KOアーティストを目指していきます。井上選手も鍛錬したからこそ、あそこまで行っているんですよね。闘いながら、それを感じました。井上選手とのファイトは、楽しみながらやれました。パンチを打つ、躱すと、やっていることはシンプルでしたが。
でも、シンプルに至るまでに、どれだけ複雑なことを乗り越えてきているかという、ボクシングの奥深さも感じていました」
各ラウンドが終わる度に、両者はグローブをタッチした。時に笑みを浮かべながら。そして試合終了のゴングが打ち鳴らされた折には、白い歯を見せ、抱き合った。
試合後、笑顔で抱き合った両者 ©Lemino/SECOND CAREER/NAOKI FUKUDAこの記事に関連する写真を見る
もちろん、井上選手をリスペクトしています。彼が相手だったからこそ、120パーセントの自分を出せたんです。できれば、もう1回闘いたいですね」
敗れながらも自身のポテンシャルを示した中谷潤人。東京ドームに詰めかけた5万5000人、そして配信を目にしたボクシングファンに、強烈なインパクトを残した。しばしの休息のあと、「最強の座」を求めて、彼はまた走り始める。
(了)
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