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【ボクシング】在米記者たちに聞く井上尚弥の現在地「アフマダリエフが番狂せを起こす可能性は?」「井上は衰えた?」 (2ページ目)

  • 杉浦大介●取材・文 text by Sugiura Daisuke

2. 井上が衰えているという見方についてどう思うか?

キム : 事実として、ボクサーはある地点や年齢に達すると、技術や身体能力がもうそれ以上は上がらなくなる。井上はすでに30戦をこなし、32歳だ。少なくとも"横ばい"になるのは自然なことだろう。さらに、階級を上げて、より大きい選手たちと戦っているという要素もある。井上が絶頂期にあるかどうかは議論されてしかるべきだが、それでもはっきり言えるのは、"モンスター"が依然として信じられないほど手強いファイターだということだ。

グッダル : 井上が衰えているとは思わない。ただ、今では過去最大の階級に属していて、より多くの耐久力とパンチングパワーを持った相手と戦っているということだ。いま私たちに見えているのは、井上がどこまで階級を上げられるのか、その限界に近づいている姿だと思う。スーパーバンタム級では相手選手の抵抗もこれまで以上であり、さらに上げれば試合はもっと厳しくなるだろう。それでも井上は依然として有利な立場には立つはずだが、今後はより競った試合が増え、これまで以上に辛抱強さと慎重さが求められるはずだ。

ゴンサレス : 32歳になった井上のエリートファイターとしての地位については、多くの議論が飛び交っている。SNSでは「井上は衰えている」という声が広がり、アフマダリエフ戦は危険な試合だと見る向きもある。確かにリスクはあるが、井上が衰えたとは思わない。ただし、最近は反射神経がやや落ちているのは事実で、それはこれまでの激しいトレーニングキャンプによるものだろう。依然としてエリートレベルではあるが、わずかに遅くなっている。そこをアフマダリエフが突けるかどうかが今戦の勝負になる。

杉浦 : 階級を上げ続けているだけに判断は難しいが、身体能力、反射神経などの表層的な要素はすでにピークを迎えたのかもしれない。その答えはどうあれ、キャリア後半のエリートボクサーは経験、知識などを積み重ねることで強さを保ち、総合力をむしろ高め続けることもできるもの。それによってより負けにくいボクサーに変化することだってある。井上が今どういう領域にいるのか、今回のアフマダリエフ戦で多くのものが見えてくるだろう。

つづく

著者プロフィール

  • 杉浦大介

    杉浦大介 (すぎうら・だいすけ)

    すぎうら・だいすけ 東京都生まれ。高校球児からアマチュアボクサーを経て大学卒業と同時に渡米。ニューヨークでフリーライターになる。現在はNBA、MLB、NFL、ボクシングなどを中心に精力的に取材活動を行なう

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