山中慎介が語る「すべてがハイレベルだった」ウェルター級王者と、敗れた佐々木尽の今後に期待すること (3ページ目)
――ノーマン選手の技術の高さは、どのあたりに感じましたか?
「コンパクトで鋭く強いパンチを打てます。まったく力みを感じさせません。しっかり考えてボクシングをしているな、という印象です。佐々木の持ち味である瞬発力や勢い、強打といったものを飲み込んでしまうというか、無効化するようなうまさですよね。それでいて、まだ24歳というのも驚きです」
――確かに、年齢以上に成熟した印象を受けました。
「そうなんです。ノーマンはアウェーでの試合にもかかわらず、緊張した様子や浮ついた雰囲気がまったくありませんでした。入場から試合中、さらには試合後のコメントに至るまで、一貫して落ち着いていた。まさに王者、という風格を感じましたね」
【佐々木は今後、どう強化していくべきか】
――佐々木選手は試合後、再起を宣言しました。今後、どのような変化、強化が必要でしょうか?
「これは本当に難しい問題だと思います。というのも、佐々木の持ち味は勢いや荒々しさ、あの振り切ったスタイルにあるわけですよね。そうではなく、丁寧にジャブを突いたり、いわゆる"きれいなボクシング"をし始めると、まとまりすぎてしまって、本来の魅力や爆発力が薄れてしまう危険性があると思うんです」
――なるほど。以前、WBOバンタム級王者・武居由樹選手のトレーナーである八重樫東さんにお話を伺った際に、ひとつの武器(強打、KOする能力)をとことん磨き上げていくことを目指している、レーダーチャートのすべてを埋めようとすると小さくまとまってしまう可能性がある、という趣旨のことを話していました。
「まさにそういうことだと思います。僕自身もそうだったように、ひとつ突き抜けたものを作って自分のスタイルにする、というやり方もあると思います。ウイークポイントを修正してレーダーチャートを円に近づけようとするのは、佐々木としては違うのかなと思いますね」
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