山中慎介が語る「すべてがハイレベルだった」ウェルター級王者と、敗れた佐々木尽の今後に期待すること (2ページ目)
【「一発」を封じられた佐々木】
――今回は主要4団体の規定通り、8オンスのグローブで試合が行なわれました(通常、国内での試合は、JBCの規定により10オンス)。グローブの影響はいかがでしたか?
「僕自身は10オンスのグローブで戦ったことがないので、正直、わからない部分もあります。ただ、少なくともグローブが小さい分、パンチの衝撃は大きくなります。ましてやウェルター級ですからね。ノーマンは、ガードの上からでも構わずパンチを打っていましたし、それが効いていたように見えました」
――実際、ノーマン選手がガードの上から強打を当てて、佐々木選手の体が揺れる場面も見られました。
「見ていて『効いてるな』と思いました。ただ、佐々木のリアクションも独特で、『パンチをあえて受けて、誘っているのかな?』と思わせる場面もありました。過去にも佐々木は、効いたふりをして相手を誘うような戦い方をしていたことがあるんです。だから今回も『あれ、作戦かな?』と。でも結局、その展開にはなりませんでしたね。ノーマンがそれを見抜いて、冷静に対応したのかなと思います」
――佐々木選手の勝ち筋としては、やはり左フックに懸けていたのでしょうか?
「そうですね、当てたかったんでしょうけど、ノーマンは接近戦もうまい。腕を上手に畳んでパンチを当てたり、やはり技術が上だったなと。ウェルター級のトップというのはこういう選手なんだなと、フィジカルの強さに加えて、技術の高さもすごく感じましたね」
――佐々木選手はこれまで、逆転KOで勝利を収めてきた試合がいくつもあります。今回も、そうした展開を期待する声が多かったと思います。
「『佐々木ならやってくれるんじゃないか。一発当たれば......』といった期待を、多くの人が抱いていたと思います。ただ、ノーマンの強さが際立っていて、佐々木としてもなかなか活路を見出せませんでした。ただ、あのノーマンでさえ、ウェルター級王者のなかではトップの評価ではないですよね」
――評価でいえば、ジャロン・エニス(WBAスーパー・IBF統一王者)のほうが格上という見方もありますね。
※ジャロン・エニスはスーパーウェルター級への転向を表明。
「そうしたところを踏まえても、ノーマンの強さ、そしてウェルター級チャンピオンという壁の高さや厚さを、あらためて日本のファンに印象づける内容だったと思います。おそらくノーマン自身にも『力の差を見せてやろう』という思いはあったと思います。メンタル、フィジカル、技術、すべてがハイレベルでしたね」
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