佐々木尽は日本人初の世界ウェルター級王者へ準備万端 「絶対に面白い試合になる」 (2ページ目)
【試合後のパフォーマンスは「ある程度は考えています(笑)」】
――国内でのウェルター級戦は10オンスのグローブが使用されますが、世界戦では軽量級と同じ8オンスになることはどう考えますか?
JS : お互いに8オンスなので有利かはわからないですが、うれしかったですね。8オンスなら一発当てれば失神させられます。10オンスだったらダウンで終わるところが、8オンスなら失神しちゃうんです。急所じゃなくても、どこに当たっても効いてしまうから、一発で終わってしまう。その代わり相手のグローブも小さいので、ガードの隙間をパンチが抜けてきてしまうのは注意しなければならないところです。自分がもらっても危ないので、だから最初に当てたほうが勝ちでしょうね。
――ディフェンスが向上しているという自信はありますか?
JS : ディフェンスに関してはこの試合が決まってからの取り組み方、気持ちがこれまでと違いました。今まではできていなかったんだな、というのが素直な感想です。しっかりとやっているイメージだったんですけど、「ここまでもらったらやばい」という危機感を感じていなかったのでしょう。今回はそれがある分、これまでよりレベルが上がってます。スパーリングでも、あまりパンチをもらわなくなりました。
――ニューヨーク出身のピーター・ドブソンとか、アマで実績あるキューバ人の選手とか、スパーリングでも強い選手とやってきましたが、いいディフェンスができていたんですね。
JS :試合でもらったらヤバいというようなパンチは、一発ももらっていないと思います。
――以前の試合時、気分転換に『キングダム』『鬼滅の刃』などの映画を見たりしていると話していました。今回はそういう息抜きはあったんですか?
JS : いえ、世界タイトル戦への想いが強すぎて、何を見ても無駄でした。気を紛らわせられないほどの想いがあったということです。
――それだけの強い気持ちで臨む初めての世界戦。勝って世界王者になったら、どんな景色が見えると思いますか?
JS : 本当に幸せだろうし、勝ててよかったとホッとすると思います。それまでの重みが全部消えて、ふわっと軽くなるんじゃないですかね。「やったぜ!」というよりは、身体のなかに喜びが広がる感じじゃないでしょうか。
――今はとにかく集中することが大事で、試合後に英語で何か言うとか派手なパフォーマンスは考えていないんでしょうか?
JS : 英語ではないですけど、ある程度は考えていますよ(笑)。日本語で言うセリフは結構、考えています。楽しみにしておいてください!
――計量後、試合前夜に食べる勝負メシは決まっているんですか?
JS : 母親の雑炊が力になります。でも計量後、本当に一番のパワーになるのは皆さんがSNSなどに書き込んでくれるコメントです。「頑張れ」とか「明日は応援している」とか、そういうメッセージを最近はいっぱいもらえるんですけど、それが本当に力になるんですよ。
――以前、アンチからの「無理に決まってる」という言葉も力になると言ってましたね。
JS : その通りですが、でも試合直前、計量終わったあととかにはそういうのは見たくないですね。ここまで来たら自信を持って臨みたいんで、マイナスなのは見ないようにしています(笑)。
――それでは、最後に意気込みをお願いします。
JS :ウェルター級では日本人史上5人目の挑戦者で、日本で世界戦が開催されるのは36年ぶりになります。ようやく歴史を変えられる時が来ました。やる自信もあるので、ぜひ皆さんに注目してほしいし、観てほしいです。
今まで一緒に戦ってくれたチームだったり、家族だったり、スポンサーさんだったり、そういう人たちの気持ちが入っている試合なので、自分のやってきたことをすべてぶつけます。ひとりじゃ絶対、ここまで辿り着けませんでした。
ぜひ皆さん、応援よろしくお願いします。歴史を変える瞬間を見ていてください!
●Profile
ささき・じん/2001年7月28日生まれ、東京都八王子市出身。八王子中屋ボクシングジム所属。高校時代から本格的にボクシングを始め、2018年にプロデビュー。2023年1月にWBOアジアパシフィック・ウェルター級王座を奪取し、2024年5月にはOPB東洋太平洋ウェルター級王座も手にし、2冠王者に。2025年1月までにそれぞれのタイトルを5回、2回防衛を果たして返上。6月19日にWBO世界ウェルター級王者のブライアン・ノーマンに挑戦することになった。これまでの戦績は21戦19勝(17KO)1敗1分。
著者プロフィール
杉浦大介 (すぎうら・だいすけ)
すぎうら・だいすけ 東京都生まれ。高校球児からアマチュアボクサーを経て大学卒業と同時に渡米。ニューヨークでフリーライターになる。現在はNBA、MLB、NFL、ボクシングなどを中心に精力的に取材活動を行なう
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