井上尚弥は「攻撃力が違いすぎる」「ショーケースの試合」 米国専門誌記者が語る4年ぶりのラスベガス登場の価値と今後の展望 (2ページ目)
【「集客、話題性ならロサンゼルスのほうが理にかなう」】
アメリカ戦略も含め井上について独自の意見を披露してくれたアイデック記者 photo by Sugiura Daisuke
――会場のT-モバイルアリーナはどんな雰囲気になると見ていますか?
KI : 日本はゴールデンウィークであり、メキシコは最大級の祝日であるシンコ・デ・マヨの週末ということで、主催者はラスベガスでも珍しい日曜夜のビッグイベントでも大観衆が集まることを期待している。ただ、カルデナスは無名選手だ。メキシコ系アメリカ人ではあってもサンアントニオ出身でメキシコ人ではない。もちろんサウル・"カネロ"・アルバレス(メキシコ)のような別次元の人気があるわけではなく、今週末にはシンコ・デ・マヨの週末に、通常見られるほどのメキシコ人の観客は集まらないはずだ。
また、最近のボクシング界の通例どおり、チケットは高価すぎたかもしれない。ゲート収入を確保するため、高額なチケットを少量販売することに集中する風潮は業界全体の問題だ。今回のイベントには、収容人数は約1万2000人のマンダレイ・ベイ・イベンツセンターのほうが適切な選択肢だったかなとも思う。井上のようなエリートボクサーでも、約2万人を収容するT-モバイルアリーナを埋めるのは容易なことではない。
――今後、井上がアメリカでもより大きな存在になるためには何をするべきだと思いますか?
KI : 現在の井上にとって最大のファイトは中谷潤人との同国人対決で、その試合の開催地は日本以外にあり得ない。また、その前にWBA世界スーパーバンタム級暫定王者のムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)と対戦するとしても、アフマダリエフはカルデナスよりもはるかに優れた選手ではあるが、アメリカでの知名度は高いとは言えない。そう考えていくと、今後のアメリカ戦略は容易ではないと思う。
ひとつ提案したいのは、ラスベガスではなくロサンゼルスで試合を挙行することだ。高額ギャンブラーが集まるラスベガスのほうが興行収入のうまみが大きいというのはわかるが、集客という面では多くの日本人が住んでいるロサンゼルス開催のほうが理にかなう。大きなイベントを開催できれば話題にもなる。たとえば3人の日本人選手がプレーするロサンゼルス・ドジャースとなんらかの形で絡めるような興行が打てれば、注目度という意味では相乗効果が期待できるように思う。
著者プロフィール
杉浦大介 (すぎうら・だいすけ)
すぎうら・だいすけ 東京都生まれ。高校球児からアマチュアボクサーを経て大学卒業と同時に渡米。ニューヨークでフリーライターになる。現在はNBA、MLB、NFL、ボクシングなどを中心に精力的に取材活動を行なう
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