山中慎介が絶賛するボクサー那須川天心の才能 対決の機運が高まる王者・武居由樹の次戦の展望は? (2ページ目)

  • 篠﨑貴浩●取材・文 text by Shinozaki Takahiro

【"神の左"も絶賛のワンツー】

――3ラウンド目のフィニッシュにつながるワンツーを叩き込んだ場面、天心選手がジャブを打った際に、相手の前足の内側にステップインしたのが印象的でした。

「あのワンツーは僕もやっていましたね。オーソドックスの相手に、内側にしっかり踏み込んで左ストレートを当てる。自分のタイミングで打ち込めたらカウンターをもらわない自信があったので、鋭く踏み込んで勝負にいっていました」

――天心選手の左ストレートも、一瞬の踏み込みからの体重が乗ったパンチでした。

「あんなパンチが出せるのか、と驚くほど見事なワンツーでした。帝拳ジムで何度かスパーリングを見ましたが、あの打ち方はあまりやっていなかったように思います。今回は特にスパーリングパートナーも強かったようですから、簡単にはできなかったのかもしれませんが」

――試合中のひらめきで打っている可能性もありますか?

「その可能性もありますね。自信がついてきたこともあるでしょう。相手の懐に入るタイミングもそうですが、入った時に『いける』という感覚があるんじゃないかと。キックボクシング時代から、そういった感覚を持っているんでしょうね」

――同じサウスポーで、"神の左"と称された山中さんから見ても、あのワンツーの評価は高いのですね。

「その時の天心の後ろ姿を見て、僕が現役だった時の8度目の防衛戦、ディエゴ・サンティリャン戦(2015年。7ラウンドでKO勝利)で打ったワンツーを思い出しました。『踏み込みの幅、体の傾き方が近いな』と。天心はパンチが多彩で、僕とはスタイルが違いますけど、強い武器が加わったのは大きなプラスだと思います」

――左ストレートを当てたあと、下がるロドリゲス選手を追いながらパンチを畳みかける流れが、とても冷静に見えました。

「前にいき過ぎず離れ過ぎず、いい距離感での連打でしたね。慌てることなく相手の動きを見極めて、ガードの隙間を狙って効果的にパンチを打っていました。仮に相手がパンチを返してきても、反応できていたはずです」

――天心選手がさらに完成度を高めるとしたら、どんなことが必要だと思いますか?

「すでにスタイルは確立されているので、それを高めていくだけだと思います。長谷川(穂積)さんも言っていたのですが、この先に苦戦することがあったとしても、それを乗り越えることでより強くなるでしょう」

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