山中慎介が「頭ひとつ抜けている」と語るバンタム級の日本人王者は? 井上尚弥との対戦が実現したら「極上のカード」
山中慎介インタビュー 後編
(前編:井上尚弥の圧倒的な勝利に「僕とネリとの因縁も終わった」>>)
5月6日に東京ドームで行なわれたボクシング興行は4万3000人の観客を動員し、歴史的な大会となった。そのセミファイナルでは、武居由樹がWBO世界バンタム級王者ジェイソン・マロニーを判定で下し、世界初挑戦で王座を奪取。この勝利により、バンタム級の主要4団体の世界王者はすべて日本人となった。
かつて、バンタム級で日本歴代2位となる12度の世界戦防衛を達成した山中慎介氏に、バンタム級の今後の展望と、4団体の王者のなかで最も評価が高い選手について聞いた。
バンタム級WBO王者の武居由樹(左)とWBC王者の中谷潤人 photo by 山口フィニート裕朗/アフロこの記事に関連する写真を見る
【タイトルを奪取した武居の課題】
――あらためて、東京ドームでのボクシング興行を振り返っていかがですか?
「34年ぶりに東京ドームでボクシングの試合が行なわれたこと自体が特別で、内容もすばらしかったですから、お客さんも本当に満足できたんじゃないかと思います。ボクシングの魅力が伝わったことは、元ボクサーの僕も本当に誇りに思います」
――いわゆる"神興行"という内容でしたね。
「井上尚弥と(ルイス・)ネリのメインイベント以外の3試合は判定でしたが、会場は大いに盛り上がっていましたね」
――セミファイナルの武居vsマロニーはいかがでしたか?
「武居は遠い距離で戦ったのがよかったのと、左右の強打も効果的でした。マロニーはジャブが出ませんでしたね。本来はジャブから組み立ててリズムを作り、右につなげるボクシングをするタイプと見ていますが、あれだけジャブが出ないと次につながらない。サウスポーが苦手なのもあると思いますが、非常に苦戦していましたね」
――マロニーは、高いガードで前に出ていくものの、その後に手が出なかった感じでしょうか?
「前に出るという意志は伝わってきましたが、手数が足りなかった。武居は序盤の左ボディーが特に有効で、ポイントを取ることができていたと思います。マロニーが打てなかった理由のひとつは、武居の左が上か下かにくるのか読みにくかったこともあると思いますね」
――左を上下に散らすという点は、現役時代の山中さんの戦い方にも共通していますね。
「そうですね。左の上下の打ち分けは、今後の試合でもカギになると思います。武居はそれに加えて、左右のフックが強い。時折アッパーも打っていましたし、武器が多いですね」
――入場の時から、武居選手の表情や佇まいから充実した感じが伝わってきました。
「すごくいい雰囲気でしたよね。普段は優しいイメージもあるんですが、試合になるとガラッと顔つきが変わる選手です」
1 / 4