RIZINフェザー級王者・鈴木千裕は「最短」にこだわる「子どもたちが格闘家を目指すキッカケをつくりたい」 (2ページ目)

  • 大楽聡詞●文・取材 text by Satoshi Dairaku

――2023年6月24日、RIZINフェザー級王者のクレベル・コイケ選手とのタイトルマッチでは、前日計量でクレベル選手が体重超過で王座を剥奪。そのため鈴木選手が勝った場合のみ王座獲得、クレベル選手が勝った場合はノーコンテストとの規定で、鈴木選手が敗れノーコンテストとなり、王座は空位となりました。

「あれは相手の体重が超過していようがいまいが、結果はたぶん変わらない。ひとつ言うなら、自分の意見を通さず、チームの作戦に従った。僕が強引に突っ込める瞬間があったけど、チームの作戦どおりにしようと思い、僕は行かなかった。

 負けた後、『なんで俺は第三者に委ねてしまったんだ。なんでチームに俺の人生を委ねてしまったんだ』とほんとに後悔しました。ましてやタイトルマッチだったので、『なんで人生の大一番を人に任せちゃったんだろう』って。反省しています」

――もう一度クレベル・コイケ選手と戦いたいですか?

「もちろんです。ただ『すぐに戦いたい』という焦りはありません。僕がチャンピオンでいれば、それは実現します。チャンピオンになりたくない人ってひとりもいない。だから僕がベルトを持っていれば、おのずとクレベルが勝ち上がって戦わざるを得ない。その時にリベンジを果たせばいい。

 あの試合は、僕の負けだと思っています。公式では7連勝ですが、僕自身7連勝だと思っていない。僕の中でクレベルに負けているっていう気持ちがあるので、必ずやりかえしますよ」

――クレベル戦からわずか1か月後の2023年7月30日、超RIZIN.2で現Bellatorフェザー級王者のパトリシオ・ピットブルと70kg契約で対戦し、鈴木選手がKO勝ちを収めました。

「正直、一日も早く試合がしたかった。でも、『もっと休みを取ってリフレッシュしたほうがいい』と周りから言われて、僕は試合の6日前まで福岡にいました。海でバカンス気分を味わい、子どものイベントに参加して、東京に戻ってきました。

 戻った翌日、『試合があるぞ。どうする?』って言われて、『やります』と即答しました。1カ月に2、3回しか練習をやっていなかったけど、どうしても試合をしたくて、急ピッチで調整しました。

 その試合の作戦を立てる時に、『作戦いらないです。俺がやりたいように戦わせてください』と言いました。結果、自由に戦ったらいい試合ができた。今までで一番いい試合ができたと思っています。

 充分な練習をせずに挑んだ試合でしたが、心も安定して体も動いた。昨年7月のピットブル戦は、『こんなに格闘技って楽しかったんだ』って感じました。それまでは楽しむよりも、作戦を考えて勝つことに徹していた。そうじゃなくて、『楽しんだやつが最強』なんです。この試合で僕が一番学んだことですね」

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る