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長州力が齋藤彰俊に「ウチでやれ」。ケンコバが絶賛する「控室ドア事件→平成維震軍」へとつながる流れ (3ページ目)

  • 松岡健治●文 text by Matsuoka Kenji
  • 山内猛●撮影 photo by Yamauchi Takeshi

揉めごとをエンタメにする「猪木イズム」

――館長がやっと覚悟を決めた瞬間でした。

「でも、それよりもドラマチックだったのは、小林さんがリベンジを果たした試合が終わったあとです。新日本の現場監督だった長州(力)さんが、齋藤さんの控室を訪れて『よくやった』と肩をたたき、『ウチでやれ』って言ったところですね」

――そこから、齋藤さんは新日本に本格参戦することになります。

「こんな見事な流れがありますか? しかも、そこから反選手会同盟、平成維震軍へとつながるわけですから。控室で偶然起こったケンカを、骨太なストーリーにしてしまうダイナミックさ。当時、見ているほうは『来週はどうなんねん?』って、毎週テレビにかじりつくしかありませんでした。

 こういったことは、今の時代でもあると思うんですよ。なんとなく『人間性が合わへんな』とか、『こいつとは仲良くなれない』って感じることが。唯一、今のプロレス界に不満があるとするならば、そういったものをぶつけ合っている感じが足りないところですかね」

――興奮と熱狂は、本気の感情がぶつかった時に生まれますよね。

「芸人の世界でもありますよ。楽屋で『こいつら、ちょっと揉めたな』って」

――そこから長い抗争に発展することもあるんですか?

「僕と千原ジュニアさんのトーク番組『にけつッ!!』で、俺らが立会人になって何個かそういうのを"処理"してます。例えば、アンガールズの田中(卓志)とロッチの中岡(創一)、スピードワゴンの井戸田(潤)とバイキング小峠(英二)が揉めた時も俺らが終わらせました。揉めごとをエンタメにする。『にけつッ!!』という番組は、あの頃の新日本を目指しているんです」

――猪木イズムですね!

「まさに、『すべてをビジネスに変えろ』という猪木さんの思想です。

 ただ、こうして話していてあらためて感じますが、新日本と誠心会館の争いが生んだ熱狂はすごかった。俺は抗争が激化するにつれて誠心会館勢に惹かれていった感があります。敵地に乗り込んで、自分たちを応援する声もないのに『こんだけ頑張るんや』と。だいぶ心を動かされましたね」

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