ドネアに聞いた井上尚弥との再戦の可能性。フィリピンの英雄は最後にリングサイドで叫んだ (3ページ目)

  • 杉浦大介●文 text by Sugiura Daisuke
  • photo by Kyodo News

【ドネアの叫び】

 村田vsゴロフキンは4月に再セット予定とのことで、井上の次戦はそのあとになるのだろう。ただ、ここで再び入国が難しくなるか、開催時期が5、6月からさらに遅れるような事態になれば、ドネアが別の路線を模索することは考えられる。

「今年は2、3試合消化したいですね。以前から話しているとおり、階級を下げることもオプションのひとつです。(3月5日に予定されていた)試合をキャンセルしたWBA世界スーパーフライ級王者のファン・フランシスコ・エストラーダ(メキシコ)は、夏前に戦う対戦相手を探しているはずで、タイミング的に私の試合時期とフィットします。

 自身の体のことをしっかり理解しているので、階級をひとつ上げるのも、下げるのも簡単なこと。今の私はスーパーフライ級、バンタム級、スーパーバンタム級で戦うことが可能で、さまざまなオプションがあるんです」

 ドネアは、自身のレベレージ(交渉を優位にする材料)を保つためか、井上との対戦がファーストプライオリティであるとは明言しなかった。条件は少し劣るが、ほかにも多くの選択肢があるのは事実。ただ......取材の最後に「2022年に成し遂げたいこと」を尋ねると、ドネアはリングアナウンサーのマネをし、マンダレイベイのリングサイドでこう叫んだ。

「世界バンタム級4団体統一チャンピオン、ノニト・ドネア‼」

 統一戦路線を熱望しているのは井上だけではない。これまで多くの勲章を手にしてきたフィリピンの英雄が、「不惑」を前にして何よりも望んでいるものは見えてきている。そのために必要な対戦相手もはっきりしている。

 名作の続編は、高確率で名作になる。今はただ、相思相愛の2人が運命の糸に導かれるように、リマッチを実現させることを願いたい。

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