プロレスラー伊藤麻希が強くなって失った「生き様」。見せる「必要がなくなった」と言い切れる理由 (3ページ目)
伊藤は巧みなマイクパフォーマンスで、ここまでのし上がってきたとも言える。そのマイクを減らしたいというのは、並大抵の覚悟じゃない。
「技とかも、増やせば増やすほど、自分ってどんなレスラーなんだろうって迷うんです。だったら、増やさないほうがいいなと思っている。一時はやっぱり、いろんな技を使えるようになりたいと思っていたけど、今はヘッドバッドとDDTと逆エビを主に使っています。
私はスープレックス系をひとつも持っていない。たとえばめっちゃデカい外国人をバンッて投げたら、絶対会場は盛り上がると思うし、そういう技は1個あってもいいのかなとは思います。でも基本はもうあんまり増やしたくないですね。『伊藤麻希といえばこれ』という感じで見られたいです」
ケガを隠すサングラス姿で人生を振り返った伊藤 photo by Hayashi Yubaこの記事に関連する写真を見る 天性のコミカルさを持つ伊藤だが、日本ではシリアスな試合をする機会が増えている。
「コミカルなイメージが先行しているので、海外ではウケないかもしれない。でも『実は動けるんだぞ』みたいな引き出しは持っていてもいいのかなと思います。コミカルなほうが最大限に自分の才能を発揮できると思うんですが、ずっとそれだけをやっていても飽きがくると思う。どちらも"なあなあ"にはできないです」
海外を意識し始めたのは、2019年4月のアメリカ遠征の時。伊藤が入場すると会場は大盛り上がりで、ポートレートが飛ぶように売れた。海外のプロレスファンはリアクションが大きく、笑わせ甲斐がある。日本とは違う楽しさがあった。伊藤は帰国するとすぐに、英語の勉強を始めた。
ゆくゆくは、海外に拠点を移したいのだろうか。
「そこは両立したいと思ってます。海外だと、自分はまだ第3試合とかを担当するレスラーなんですよね。さっき言ったとおり、ずっとそれだけをやっていても飽きがくるだろうから、そういう自分にはなりたくなくて。前に進みたいんですよ。日本でどんどん難しいことにチャレンジして、海外では楽しいことをいっぱいして、『実はこういうこともできるんだよ』ということをたまに出すみたいな。それで好きになってくれたお客さんを日本に持って帰ることができたら、一番いいのかなと思ってます」
3 / 4