東京五輪金メダルを目指す柔道・阿部兄妹。詩から一二三にエール (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Nishimura Naoki/AFLO SPORT

 その影響か、4回戦のマッテオ・メドヴェス(イタリア)には、なかなか組ませてもらえない展開。それでも終了33秒前、組んだ瞬間に大外刈りを出して一本勝ち。続く準々決勝ではヨンドンペレンレイ・バスフー(モンゴル)を相手に、残り2秒で大内刈りを決めて一本勝ちと、まったく不安のない柔道をした。

 だが、最大のライバル・丸山城志郎(ミキハウス)も冷静さが際立つ柔道で勝ち上がってきた。グランドスラム大阪と体重別選手権で一二三に連勝している丸山は、4試合中3試合をキレのある内股で一本勝ち、1試合は巴投げで技ありと安定感抜群だった。

 ふたりの対決となった準決勝は、10分27秒の戦いとなった全日本選抜と同じように死闘となった。最初は一二三が積極的に仕掛け、開始1分13秒には一二三の投げを受けた丸山が左足を痛める。さらに1分48秒には丸山に2回目の指導が出る展開で一二三がリードすると、全日本選抜と同じような展開なった。

 残り1分11秒には、一二三の投げが決まって主審が技ありを宣言。あっさりと決着がついたかに思えた。だが、その技ありが取り消され、再び混戦に。GSに入ると丸山が指を治療する場面もあったが、積極的に内股を出して、一二三を追い詰める。そして巴投げで崩した延長3分46秒に浮き腰で技ありを取って熱戦に決着をつけた。

 丸山は死闘をこう振り返る。

「左の内側靭帯を痛めたのか、膝から下に力が入らなかった。応援してくれた人の声が聞こえたのと、あとは勝ちたいという気持ち。そのふたつが生きた結果だと思う」

 延長のGSに巴投げで崩されて負けるというグランドスラム大阪や全日本選抜と同じ戦いをしてしまった一二三は、試合後「最初はガンガン攻めたけど、GSに入ってからは様子を見てしまった。もっとガンガン攻めていけばよかった」と反省を口にした。

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