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長州力を引っ張り出す。新日本参戦の
大仁田厚を後押しした裏方たち (2ページ目)

  • 松岡健治●文 text by Matsuoka Kenji
  • photo by Sankei Visual

 ただ、長州選手を引っ張り出すまでには時間がかかりましたね。"出来レースだった"と思われているかもしれないけど、まったくそんなことはなかった。長州選手は、復帰するつもりはまったくなかったんです。永島さんからも「難しいと思うけど、オレに任せてくれ」とだけしか言われていなかった。

 実際、オレがマスコミを通じて長州戦をアピールしても、反応はなかったですから。そんな中でも、新日本は4月のドーム大会で蝶野正洋との電流爆破をマッチメイクして、ドーム興行の看板としてオレの存在を認めてはくれていた。

 蝶野選手との試合は面白かったですね。入場でオレがくわえたばこで登場して、彼はハマーに乗って現れた。"リッチな新日本"と"プアーな大仁田"という構図を浮き彫りにさせることができたんですが、そういうセンスを蝶野選手は持っていました。

 その試合は「新日本で初めて電流爆破デスマッチ」ということで話題を呼びました。一点だけ、蝶野選手が普段は着ないチョッキみたいなものを着てリングに上がってきたのはひっかかりましたね。爆破が怖かったのかもしれないけど、やるんならいつもと同じスタイルでこいよって思いましたよ。

 蝶野戦も注目され、8月には神宮球場で化身のグレート・ニタとして、武藤敬司の化身のグレート・ムタと対戦しました。それでも長州選手は動かない。そうなると、ファンの興味が薄れていくんです。

 そんな膠着(こうちゃく)した中で力になってくれたのが、新日本を中継するテレビ朝日の真鍋由(まなべ・ゆう)アナウンサーでした。新日本参戦が決まったときにインタビューに来た彼に、張り手を浴びせて蹴りを入れたりしたんです。それを見たテレ朝のアナウンス部長が激怒して、プロレス中継のスタッフに「やめさせろ」って猛抗議してきたらしいんです。

 でも、その週の視聴率は普段より上がって、そこから真鍋アナがオレをインタビューすることになった。「大仁田劇場」と言われて、番組の目玉になっていったんですよ。彼とは食事もしたこともなければ、普段もそれほど会話する仲ではなかった。試合後のインタビューのやり取りは、打ち合わせが一切ないアドリブでした。その緊張感が視聴者に伝わって、視聴率もよかったんだと思います。

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