新旧世界王者も賛同。日本ボクシング界が
「検察はタオルを投げろ!」 (2ページ目)
支援委は、さらに現・元世界王者ら著名なボクシング関係者にメッセージを出してもらい、SNSを通じた発信を強める構えだ。
ボクシング界は、2006年に東日本ボクシング協会が袴田巖再審支援委員会を設置。翌年には日本プロボクシング協会に支援委が発足し、以来、袴田さんの支援運動の中核を担ってきた。
東京・後楽園ホールで大がかりなチャリティーイベントを開いたり、最高裁や法務省へ要請書を提出したり、ピンバッジを弁護団に贈ったり、メッセージ動画を制作したりと、多彩な活動を展開している。輪島功一、大橋秀行の元世界チャンピオンを中心に、内藤大助、井上尚弥、内山高志、山中慎介ら、その時々の現役世界王者も参加。今年1月には雪の中、京口紘人ら約60人が東京高裁前に集結してアピール行動を敢行した。
当初は協会内に「お上に盾突くのはどうか」という意見もあり、一筋縄ではいかなかったそうだ。
「袴田さんが嫌疑をかけられたきっかけが、『ボクサー崩れ』という言葉に象徴されるボクサーへの偏見だったことが知られるにつれ、賛同の輪が広がっていきました。日本フェザー級6位まで上がり、1960年に年間19試合の最多試合記録を持つ先輩ボクサーへの尊敬の気持ちも共有されています」(新田氏)
支援団体が開いた集会で挨拶する袴田巖さん(写真左)と姉の秀子さん。日本プロボクシング協会の支援委員会も主催者に加わっている(18年2月24日、東京都内) photo by Koishi Katsurou 新田氏は2007年、まだ東京拘置所に収監されていた袴田さんと、ボクシング関係者としては27年ぶりの面会を果たしている。すでに長期間の身柄拘束による精神障害(拘禁反応)が見られた袴田さんだったが、ボクシングの話は噛み合った。釈放後の2015年、後楽園ホールに設けた「袴田巖シート」での観戦に招待した際も、袴田さんは集中して試合に見入り、専門用語を交えて様子を説明していた。ボクサーの習性がしみついているのだ。
「袴田さんの表情は、4年前の釈放直後とは比べものにならないほど明るくなりました。自由でいられることが何よりの薬だと実感します。ボクシングへの関心度は上がったり下がったりですが、いつでもアクセスできるようにしておくことが私たちの役目です」(新田氏)
ボクサーたちは支援活動を「『元ボクサー』を理由に理不尽な疑いをかけられた袴田さんの誇りを取り戻す闘い」と位置づけてきた。それは、自分たちの「誇り」を再確認する営みでもある。だからこそ一刻も早い、袴田さんが元気なうちの再審開始と無罪判決を待ち望み、今回のキャンペーンでその動きを加速したいと意気込む。
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