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「指導」だらけ。男子柔道100キロ超級は
反則決着ばかりでいいのか (2ページ目)

  • 柳川悠二●文 text by Yanagawa Yuji
  • 岸本勉●写真 photo by Kishimoto Tsutomu

 リスクを負いながらも果敢に攻めるような選手はおらず、どの試合もお互いに最初から反則勝ちを狙ったような消極的な展開ばかり。試合時間は5分から4分に短縮されたが、大柄な重量級の選手たちが、本戦、そしてゴールデンスコアに入ってまでも組み手争いに終始する柔道など、はっきり言って退屈だ。

 見ていて退屈な柔道とはつまり、国際柔道連盟(IJF)が標榜する世界の柔道の潮流にも逆行する。

 今年2月のグランドスラム・デュッセルドルフ(ドイツ)では、100キロ超級の決勝が昨年の全日本選手権王者である王子谷剛志(旭化成)と、原沢という日本人対決となった。学生時代から幾度となく戦い、手の内を知り尽くしたライバル対決は、やはり動きのない試合展開となり、最後は両者に指導3が渡り、両者反則負け。ともに準優勝という前代未聞の結果に終わった。

 これは今年から導入された新ルールによるものだ。柔道がよりファンを魅了し、よりテレビ映えするスポーツとなるために、技による一本決着を増やそうという目論見を持つIJFが、見せ場を作ろうとしない日本人選手の柔道を両成敗することで、いわば世界への"見せしめ"にしたわけである。

 現役時代に美しい内股で一本の山を築いた井上康生氏が、2012年のロンドン五輪後に男子チームの監督に就任して以来、最も気にかけてきたのが100キロ超級だ。選抜体重別の終了後、井上監督は最重量級の現状にこう嘆息した。

「国内争いということで、指導による決着が多くなってしまった。これから世界と戦っていく上で、日本人は技術力が必要になってくる。選手、所属の先生方、いろんな方々のお力をお借りしながら、日本人ならではの能力をしっかり伸ばしていけるように努力していきたい」

 9月にアゼルバイジャンのバクーで開催される世界選手権の同階級の代表は、4月29日の全日本選手権後に決まる。小川と原沢、そして全日本を2連覇している王子谷。実力伯仲の代表争いは小川がリードしているが、全日本選手権で問われるのは誰が勝つかではなく、その柔道の内容であろう。

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