2018.04.11

「女三四郎」×3人。女子柔道
52キロ級が大変なことになっている

  • 柳川悠二●文 text by Yanagawa Yuji
  • 岸本勉●写真 photo by Kishimoto Tsutomu

 2年後(2020年)の東京五輪に向け、日本の柔道界でいま最も熾烈で、最も面白い代表争いが女子52キロ級だ。

 先頭を走るのは昨年夏のブダペスト世界選手権で金メダルに輝いた志々目愛(ししめ・あい/24歳/了徳寺学園)。たとえ「指導」のポイントで相手にリードを許していても、一発の内股で形成を逆転できるダイナミックな柔道家だ。

 そして2番手に位置するのは、世界選手権の決勝でその志々目に敗れた角田夏実(つのだ・なつみ/25歳/了徳寺学園)。伝家の宝刀”巴(ともえ)投げ”と、それに連続して仕掛けていく関節技を得意とする柔道家である。

女子52キロ級準決勝で阿部詩(写真上)を得意の巴投げで破った角田夏実 さらに、昨年終盤から破竹の勢いでこの2選手に迫ってきた”第3の女”が、夙川(しゅくがわ)学院高校3年の阿部詩(うた/17歳)である。世界選手権後に行なわれた昨年11月の講道館杯、12月のグランドスラム東京、そして今年2月のグランドスラム・パリと3連勝を飾った。

日本柔道のエースである男子66キロ級の阿部一二三(ひふみ/日体大3年)を兄に持ち、背負い投げをはじめとする担ぎ技を積極的に繰り出し、気迫を前面に押し出す兄譲りの攻撃柔道で、一躍、柔道界のニューヒロインとなった。

 三者の実力は伯仲し、いまや世界の舞台で優勝することよりも、国内で生き残ることの方が難しい階級である。現世界女王か、寝業師か、それとも――。

 三者が揃った今年の選抜体重別選手権(福岡)を制したのは、最年長の角田だった。

「ここを優勝しないと、この先、(今年の世界選手権や東京五輪の代表も)ないかなと思っていたんですが、1試合1試合、楽しんで戦えました」

 志々目との決勝では先に2つの指導を与えられる窮地に陥(おちい)った。しかし、本人は気づいていなかったという。それだけ無我夢中になって狙っていた技は、やはり巴投げ。延長に入ってとうとう志々目の懐に飛び込んで身体を浮かせる。判定は「技あり」。その瞬間、優勝が決まった。