【ボクシング】ライト級・坂本博之が語る「減量時の過酷な食事」 (5ページ目)

  • 水野光博●文 text by Mizuno Mitsuhiro  是枝右恭●撮影 photo by Koreeda Ukyo

「神様はこういう仕打ちを、こういう境遇を与えるのかと。だったら、神様にケンカを売ってやる。俺らは死なんぞ。運命なんて信じない。いくらでも自分で変えてやるって、そのとき誓ったんです」

 ただ、その情熱と背中合わせにあったのが、危機感だった。

「僕には帰る場所がなかった。実家はない。だから、家族も日常も全部、自分で築かなきゃならない。そのためには、勝ち続けるほかにない。この拳で、すべてを手に入れるしかない。そういう危機感は常にありましたね」

 プロボクサーとなった坂本は、ランキングを駆け上がる。しかし、全日本のライト級新人王に輝いても、日本チャンピオンになっても、計量後に好物のハンバーグを食べることは変わらなかった。ただ、ハンバーグは、デニーズのそれではなく、交際を始めた彼女――現在の妻が手作りしてくれた、柔らかなハンバーグとなっていた。
(後編に続く)

photo by Koreeda Ukyophoto by Koreeda Ukyo【Profile】
坂本博之(さかもと・ひろゆき)
1970年12月30日生まれ、福岡県田川市出身。1991年12月にプロデビューし、1993年に全日本ライト級王者となる。1996年にはOPBF東洋太平洋ライト級王座を獲得し、1997年に世界初挑戦するも判定負け。その後、1998年から2000年にかけて3度、再挑戦するが世界タイトル奪取は叶わず。2007年に現役を引退。現在は東京都荒川区でSRSボクシングジムを経営している。右ファイター。47戦39勝(29KO)7敗1分。

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