【男子バレー】西田有志、SVリーグ開幕戦勝利で新章が始動 「過程がものを言う」と今季に自信 (3ページ目)
【髙橋藍と火花を散らした】
「最善は尽くしています。去年のチームだったら、あの展開で3セット目に(調子を)戻せなかったかもしれません。今は、どの選手が出ても(この状況を)作れる自信があります。完成度はまだまだですし、これからですが、"試合で1点を取る"というところの準備で、できない意識があるなら、それを少しずつ払拭し、できるマインドになるように......」
西田は言葉を選んで語ったが、求道的、哲学的なアプローチと言えるだろう。
彼はコートで本能的な衝動を見せる。それが人気の源泉と言える。少しもおちゃらけて見えないのは、そこに芯が通っているからだろう。
対戦相手の髙橋藍とは対照的な求心力を持った選手だ。
「西田選手の存在は刺激になります。迫力のあるバレーボールが一番魅力ですよね。あれだけパワフルなスパイクはなかなか打てない。ジャンプサーブや豪快なスパイクは、自分にもできないもので。迫力でお客さんを惹きつける魅力がある選手ですね」
今年3月に行なったインタビューで、髙橋は西田についてそう語っていたが、ふたりは違うキャラクターでありながら、コインの表裏のように結びついている。日本男子バレー界が生んだ寵児と言える。今回の開幕2連戦でも、ふたりは火花を散らしていた。
サントリーとの第2戦の第4セット、西田はブリザールのトスをクロス、ストレートに打ち分け、半ば覚醒する。バックアタックでは一度トスが来なくても、続けて動き直し、豪快に決めた。そしてサーブは髙橋を狙い、会場の声援が爆発するようなエースを奪い取った。24点目のセットポイントもブロックアウトで取った。
だが、この日は髙橋がデュースでの強さを見せた。結果にアプローチする王者の強さか。開幕節は痛み分けとなった。
もっとも、西田は"最後に栄光に浴する道"を進んでいる。
「全員で来週の練習から『クオリティを上げていこう』って話しています」
記者会見で西田は、低いトーンで言った。結果以上に過程を追求し、結果も導き出す。そう腹をくくっているように見えた。
著者プロフィール

小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。
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