関田誠大の不在で、ふたりのバレーボール男子日本代表セッターが繰り広げる「競争」と「協力」 (3ページ目)
「大宅選手とパスのタイミングは合わせてきました」
SVリーグでともに王者となった髙橋は、コンビネーションを重ねたことが結果につながったと振り返っていた。
「(スパイクで)大事なのは(ジャンプとトスの)スピードが合うか、合わないか。空中でボールを待っていることもあったので、早く入りすぎなのか、トスが遅いのか。そこは本数を重ねながら、お互いが要求し合い、テンポを調整してきました。ふたりでプレー動画を見返し、"もう少し早く""もう少し(球足を)延ばして"と詰めながら」
そしてファイナル進出がかかったアメリカ戦の3セット目、大宅は22-22の状況で出場すると、速いライナー性のパスで髙橋のレフトからのスパイクに合わせている。さらにアンダートスから加点に成功。そしてマッチポイントでは、髙橋の華麗なバックアタックを演出した。
「競争や比較はあると思いますけど、自分自身も、今の状況で成長できるように。今までは関田選手がひとりで出続けて、今はふたりが助け合ってやれている感じなので」
そう大宅は言う。競争が起爆剤になるか。
ブラジル戦、コート外から試合を観ていた石川祐希が大宅について話している。
「今日は結構攻めた彼らしいトス回しだったと思います。今は試合に出たり出なかったり、というところで、"ミスをしたくない、ミスができない"という状況だと思いますけど、彼らしいトス回しに期待したいです」
7月30日、ネーションズリーグはファイナルラウンドが中国で開幕。準々決勝、日本はポーランドと戦う。パリ五輪銀メダルの強豪との対決は、セッターの切磋琢磨にあつらえ向きだ。
著者プロフィール
小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。
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