パリオリンピック開幕直前、西田有志が滲ませた自信「勝ちきれる準備はしてきた」 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

【「全員が活躍するチームでありたい」】

 サポートメンバーとして帯同している小川智大は、山本に匹敵するリベロで、高いレベルのディグを見せていた。西田はその堅守を圧巻のサーブで崩すと、ネットに近づいて"どうだ"と言わんばかりに上半身を揺らした。やりきった西田が流れでベンチに座ろうとすると、小川が"もう一度打ってこないのか?"と挑発するのだった。

 西田とその周辺は「表情」が豊かで、色が出やすい。健全な競争の図式が表に出る。チーム内に世界標準があることで、52年ぶりの金メダルも不可能でないところまで辿り着いたのだろう。

 西田は日本の強さの理由を「誰が出ても戦えるから」と力説していた。

「自分としても、選手としてのレベルを上げられているとは思うので。ここでそれを証明するためにもプレーしたいです。でも、全員が活躍する、というチームでありたいですね」

 西田は言う。チーム内での競争力を、そのまま敵にぶつける。

「ドイツはオリンピック予選でも、(本大会出場を)自力で勝ち取っているし、それだけ力のあるチームですね。福岡(のネーションズリーグ)で対戦した時も、それは感じました。今回は(主力となる)出てなかった選手が出て、トスの配分がどうなるか、データを見てひとりひとりが準備しながら......。でも一番は、相手よりも自分たちがどういうプレーをするか。そこで最高のパフォーマンスを見せられるように準備したいです」

 ドイツ戦の注目のひとつは、世界トップレベルのオポジット、ギョルギ・グロゼルとの勝負になるだろう。

「(一番注意すべきは)グロゼル選手だと思うんですけど、その前にクイックを多用してくるはずなので、それをどう捌いて、ディグを何本あげられるか、になるかもしれません。レフトサイドのディフェンスをどこまでできるか。それに向けて準備しますが......。まあ、チームが勝てばいいですし、ひとりで戦っているわけじゃないんで」

 仲間を信頼しているのだろう。その温度は、他の選手も同じように感じられる。西田のスパイクを止めることができたら、グロゼルのスパイクも恐れることはない、という感覚こそ、今の日本の強さだ。

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