ネーションズリーグで古賀紗理那が向き合う課題と「その先」にあるパリ五輪への道 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

【課題を次々と炙り出して】

 古賀はそう心境を明かしていた。バレーはコートに立つ6人の連係で成り立つ。それだけに小さな狂いを修正できないと、やがてズレが大きくなり、流れまで失う危険を孕む。

「1、 2セットは取りましたが、オフェンスのところ、私も含めてスパイカーが100%で
打てていませんでした。その感じを修正したかったのですが、うまくできずに。3セット目以降は相手のほうがテンポよく、気持ちよくスパイクを打つようになっていました。オフェンス展開で、好き放題やられた印象で。ほしい時にパスがこない、ほしい時に点数が取れない......。もっとパイプ(攻撃)も使いたかったのですが、むしろ向こうに使われてしまって」

 古賀は慎重に言葉を選びながら、課題を次々に炙り出していた。それは体内の毒をえぐり出しているようで、痛みも伴うのだろう。苦悶が透けて見える表情だった。

「私たちの傾向として、苦しくなるとレフト、レフトとなる。だから、(事前に)『9メートルの幅を全部使おう』とは話していたんです。ただ、それでレフトに持って行くべきタイミングで逆サイドというのもあって、コンビがなかなか噛み合わなくて」

 戦いのなか、日本のハイセットやディグが乱れていった。カナダの重たいサーブやスパイクの威力に対し、守備は劣勢となる。自然とスパイクも決まらず、サイドアウトを取れなくなっていった。

 しかし、勝機がなかったわけではない。

 フルセットに持ち込まれた時も、日本は古賀や井上の活躍でリードし、コートチェンジを迎えている。一時は11-9でリード。その後は逆転されるも、セットポイントを取られながら、古賀がレフトからクロスに打ち込み、いったんはデュースまで持ち込んでいるのだ。

 それでも敗れたのは、気持ちが足りなかったのか?

「こういう時には特に、"気持ちが弱かった"と捉える人も多いと思います。選手でもスタッフでも、たくさんいると思いますけど......。もちろん、気持ちは大事なんですけど、まずは自分たちがやるべきことを整理するのが大事で、たとえばコンビの精度、"パスをこう作ろう"というのをしっかり確認し、次に向かえるように」

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