石川祐希も躍動して強豪イタリアに快勝。日本は全員攻撃バレーだ (2ページ目)

  • 柄谷雅紀●取材・文 text by Karaya Masaki
  • photo by Kyodo News

 しかし、それだけではない。この試合では福澤達哉(パナソニック・パンサーズ)の冷静さが光っていた。サーブが決して得意ではない福澤は、相手コートの手前に落とすサーブに徹していた。

「パイプ(中央からのバックアタック)を打たせないという狙い。それと、うちにはいいサーバーがいっぱいいるんで、僕は無理に強く打つよりも、つなぎでミスをせずコースを狙っていくほうがいいかな、と」

 バックアタックに入る選手の手前にサーブを落として体勢を崩し、相手の攻撃の選択肢をひとつ消す。そうすることでブロックのマークがつきやすくなり、レシーブできる確率が上がる。それがブレイクポイントにつながっていく。そんな日本の"トータルディフェンス"が機能した。

 福澤だけではない。ミドルブロッカーの小野寺、山内晶大(パナソニック)のサーブは、取りにくい球質で厳しいコースを狙えていたし、セッター関田誠大(堺ブレイザーズ)のサーブでもブレイクポイントを奪えていた。

 そして、勝つためにもっとも重要な"点をもぎ取る力"も申し分なかった。石川が21本のうち16本を決め、76.19パーセントという驚異的なスパイク決定率をマーク。西田も24本打って14本を決めており、十分な働きだ。第3セットこそイタリアに対応されて決まらなくなったが、セッターの関田が「トスを上げた感覚が遅かった(トスが浮いていた)ので、西田に早めに助走に入ってくれと言って、突くような(速くて低い)トスを上げました」と、タイミングを微調整して再びスパイクで得点するなど、修正能力もあった。

 この2人の決定率の高さは、チーム全体で導いたものだ。ミドルブロッカー陣は高い確率で速攻を決めていたし、何より全員の攻撃参加意識が高かった。レフトから石川や福澤がスパイクを決めたかと思えば、中央から小野寺や山内が速攻を打つ。ライトからは西田が強打を放ち、中央からはバックアタックも飛んでくる。福澤がレシーブしてバックアタックに入れないと見るや、サーブを打ったあとの山内がバックアタックの助走に入るほど攻撃参加意識が徹底されていた。

 常に4人で攻撃することで、3人しかいないイタリアのブロックは文字どおり完全に分断された。司令塔の関田は手応えをこう話した。

「相手はブロックがいいチームだったので、いかに分散できるかが大事だと思っていた。それがうまくできたのがよかった」

 まさに完璧な試合運び。試合後に西田が「『日本のバレーは変わったんだ』っていうところを見せていきたい」と言えば、石川もプライドを込めて力強く宣言した。

「格上のチームを倒す自信を持っている。ずっと『メダルを取る』と言っているので、本当にこのW杯でメダルを取りにいきます」

 もう、「男子バレーは弱い」なんて言わせない。今後に期待を抱かせる戦いぶりだった。

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